さらに全5話という限られた話数で、原作の6巻までを(部分的にはもっと先の要素も)入れ込んだ構成もおおむね良くできていたと思う。
いわば原作をギュッと圧縮しているわけだが、各エピソードを流れるように繋げているおかげか、違和感やダイジェストのような印象はあまりなかった。
基本的には原作をなぞっているようでいて、終盤ではオリジナルの展開もある。原作を読んでいる人こそが感動できる、まるで原作ファンが観たかった「IF」を叶えたかのようなサプライズは、2023年よりNetflixで配信された実写ドラマ版『ONE PIECE』も連想させた。
ただ原作をトレースするだけではない、映像作品として語り直すからこその工夫もされているのだ。
他にも気になってしまうところをあげると、肝心のアクションが間延びしている場面があること。特に第1話の終盤で戦うのは、原作を読んでいても読んでいなくても、ザコ敵とも言ってしまえる相手なので、あれほどにバトルの尺が長いとさすがに食傷気味になってしまう。
また、アクションシーンの画面が暗く思える場面もある。特に4〜5話は画面の明るさの設定を少しあげるのも、より楽しむコツかもしれない。
全5話への物語の圧縮に工夫が凝らされていると前述はしたが、それでも漫画における感動は、それまでに長い長い「積み立て」があってこそ。漫画を読んだ時の物語の感動には、残念ながら到達していないというのも正直なところだ。
もちろん省かれた箇所も多く、特に原作の序盤の「霊界探偵編」は良いエピソードが多かったため、それらを実写ドラマとして観てみたかった気もする。
だが、やはり今回は『幽☆遊☆白書』という人気コンテンツをもって、生身の人間が演じてこその「アクション」や「キャラクターの面白み」にこそ大きな魅力があると思えた。コスプレ感が目立ってしまう中でも、そちらのほうに意識を向けてみてもいいだろう。

『岸辺露伴は動かない』DVD(NHKエンタープライズ)
実写化というアプローチはそもそも漫画のファンから拒否感を呼びやすいのだが、近年ではビジュアル面から好評を得た作品も少なくない。最後にそれらを紹介していこう。
2020年にドラマ化された『岸辺露伴は動かない』では、漫画のキャラクターの特徴をヘアバンドの形で再現しつつ、「怪奇もの」のテイストに合うシックな印象の、「現実にもあり得る」バランスの衣装が好評を博していた。
さらに、前述もしたドラマ版『ONE PIECE』の衣装はかなり原作に忠実でコスプレ感は残るものの、莫大な製作費と労力をかけた世界観が構築されていたおかげもあり、違和感は少ない。何より、「ウソップの鼻を高くしない」「サンジの眉毛を渦巻きにしない」といった、「再現しすぎない」線引きができていたように思う。
はたまた、2012年に映画第1作が公開された『るろうに剣心』では、衣装に「汚し」を表現するためコーヒーを塗り混んでおり、見た目の違和感はかなり減少していた。
一方で、2024年1月19日公開予定の実写映画版『ゴールデンカムイ』では、予告編を観た人から「服が綺麗すぎる」という指摘が寄せられていたりもする(ただ、こちらは本編を観てみれば受け入れられる可能性も大いにある)。
今回の実写ドラマ版『幽☆遊☆白書』は、やはり前述したように優れた点がたくさんあるからこそ、コスプレ感が不評を買ってしまうのは非常にもったいなく思えた。
映像作品において「見た目」というもっとも重要な要素は、もっと突き詰めてほしいと改めて願う。
<文/ヒナタカ>
ヒナタカ
WEB媒体「All About ニュース」「ねとらぼ」「CINEMAS+」、紙媒体『月刊総務』などで記事を執筆中の映画ライター。Xアカウント:
@HinatakaJeF