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下積み時代のバイト漬けを明かした43歳俳優。当時から完成されていた“声の魅力”は最新作でも

とてつもない振り幅

 2002年に『世界ウルルン滞在記』(TBS)に出演したときのこともよく覚えている。当時22歳の玉木が、エチオピアのコンソ族の中にまぎれて素っ裸になり、おちょくられる。  顔を真っ赤にして、恥ずかしそうにしていた。そんなときにでも低音は腹の底から響く。  43歳になった現在は、重厚で深みある役柄を演じ、より激渋なヴォイス・ワークがある。こうして玉木の出演作品を振り返っていくと、まるでヴォイスタグがあらゆる作品の署名として付いているようにさえ思う。そのタグをひとつひとつ確認することが、彼の作品を見る醍醐味なのだ。  山﨑賢人主演の映画『ゴールデンカムイ』(2024年)で玉木演じるエキセントリックな軍人役のぶっ飛びにも驚くが、『ジャンヌの裁き』ではまさかの少女漫画家を演じるという、とてつもない振り幅にやっぱり特別な才能を感じる。

新たなる美声の形態

 では、その『ジャンヌの裁き』でも美声を発してくれるのだろうと期待していると、これがうまい具合に視聴者を混乱させる。美声の多くは、発した言葉の語尾がゆるやかなビブラートをともなってふるえてくるものだと思うが、本作の玉木はいつもとすこし違う。  第1話冒頭場面。挙動不審の越前剛太郎(玉木宏)が、自作漫画が積まれた新刊コーナーを遠くから見つめている。女子高生ふたりがやってきて、手に取る。剛太郎は思わずガッツポーズで、「よし!」。  玉木にとっては久しぶりの民放連続ドラマ主演にも関わらず、その第一声がこんなにも短いとは。コミカルな歯切れの良さは、なるほど新たなる美声の形態なのだろう。  買い物をして家に帰ると、息子がパック詰めされた卵を割ってしまう。それを見た剛太郎がビックリ目で、「た~まご~」と今度はややビブラートぎみに短く発する。まさしくバリエーション豊富なヴォイスタグ的な台詞回しではないか。
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ヴォイスタグ付けドラマとして
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