県内エリート男子高で“性教育”の名の下セクハラにあった図書館司書46歳女性、教職員カーストで圧された声とは
ミユキさんの行動は、男子校が長いあいだ保ってきた文化にそぐわないものだったのだろう。同質性の高い集団であるがゆえの不文律があるというのは、それまでにも感じてきたことだった。
ミユキさんは独身で、自分の人生に子どもはいらないと思ってきた。同居しているパートナーがいるが、いまのところ婚姻届を出す予定はない。男子校に赴任したときに校長にそう伝えたところ、あからさまに驚かれ、「保護者になんと説明すればいいのか……」といわれた
その高校の生徒は、比較的裕福な家庭に育った子が多かった。父親は地方議員や開業医、士業。母親は専業主婦というのが典型だと思われる。そんな環境で育まれた“文化”のもとでは、いい年齢をした男女が結婚しないのは、常識外れとみなされるのだろう。
セクハラをめぐる学校との話し合いは、回を重ねても平行線をたどった。「もう無理だ」と思い、ミユキさんは職を辞した。
一連の出来事をとおしてミユキさんには、気づいたことがある。
この学校だけではない。「男子校文化」の影響は、地元、ひいては県全体に及んでいる。
有名男子校は県内にほかにもあり、その生徒の多くが都市部の有名大学に進学する。大学卒業後、彼らにとって郷里に戻っての就職や起業はとても有利で、公、民ともに世代を問わず、エリート職には男子校出身者が名を連ねている。
「男子校出身者が自分の職場にも“伝統修練”の文化を持ち込んでいるんですよね。そうやって、県内の大事なことを動かしているのでしょう」
先述したように、マッチョな文化に適応できず離れていった男子生徒もいる。「勝ち残った男たち」が作る地元の空気は、女性だけでなく彼らにも息苦しいものだろう。
では、女性はどうしているのか。ミユキさんは自身のことを、こうふり返る。
「兄がいるのですが、身体がちょっと弱くて。それもあって母は、将来のために少しでもいい大学に行かせないと、と非常に教育熱心でした。教育にかけられるコストの多くは兄に回され、私はずっと『家から通える学校にしなさい』といわれてきました」
似たような境遇のクラスメイトは少なからずいて、「女の子が大学に行ってもしょうがない」と言われた友人もいる。ミユキさんは学校図書館司書として女子校に勤めたこともあるが、そこの生徒たちも親や周囲の大人から同じことをいわれていた。
そんななかで自分の進路を決め、資格を取り、子どものころから憧れていた職業に就いたミユキさんだったが、図書館司書は決して待遇がよくない。
県内で力を持つ男子校出身者

女子たちの進路
