
それにしてもちょっと演技が過剰過ぎはしないかと揶揄されてもいたし方ない。本作は何せ、鈴木おさむによる地上波連ドラ脚本の引退作なのだから。どうやら小池はこうした背景で、鈴木おさむのためならと、意気込んだらしい。
小池にとって映画初主演作となった『ラブ★コン』(2006年)の脚本を書いたのが鈴木だ。彼にとってもその後、映画脚本を手がけていく足がかりになった記念碑的な作品でもある。
お互いチャンスをつかんだ者同士。一度乗った船は簡単には降りない。もしどちらかが降りるときには、最大の餞別を用意することを忘れない。恐るべき怪演で魅せる『離婚しない男』は、何より小池から鈴木への馬のはなむけ作品なのだ。

とはいえ、そんな関係者同士の背景など、実際の画面から視聴者に気取られてしまっては野暮。小池は、はなむけ的な意気込みなど、お首にも出さない。
むしろ、勝手に勢いづいた感じで、自由奔放に振る舞い、暴れまくる。あの大げさな演技は、言わば、フィクション性を最大限強めるため。小池徹平による小池徹平劇場を開幕し、マサト役の悲喜こもごもを、小池徹平オペラ・コミック(喜歌劇)とする。
「ラストシーンだ!」とか「フィナーレだ!」言っておきながら、逆に結末が二転三転、予測不能になる盛り上がり方が、この喜歌劇の特徴。渉をホテルに連れ込むことに成功したマサトが、事務所のテーブルに立ち上がって、雄叫びのような唸り声を上げたり、ヌハハハハと高笑い。すべてが見せ場のようだ。