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33歳ジュノンボーイ俳優、12年ぶりに大河ドラマ出演決定。“硬派で社会派”な俳優道とは

中村蒼の使命とは

『東京難民』

『東京難民』DVD(キングレコード)

 テレビドラマ初主演作は、『BOYSエステ』(テレビ東京、2007年)。ジュノンボーイ出身のイケメン俳優にはお決まりのコースとして、無邪気にイケメンを消費するかのようなキワモノ作品にも出演している。若手を売り出す常と理解すべきだろう。  でもイケメンが消費されても、中村蒼自体は決して消費されない。なにせ、彼には使命があるのだから。『東京難民』の冒頭場面が忘れがたい。大学生の時枝修(中村蒼)が、くわえ煙草で郵便を受け取る。  扉が閉まる瞬間、煙が吹かれ、玄関に充満する空気感がやけに生々しい。煙をまとう修が大学に行く。出席確認のために学生証をタッチするが、ハネられてしまう。  学生課に確認してもらうと、学費の未納で、除籍になっているという。そんな事情聞いてない。平凡な大学生の日常が、この瞬間に崩れる。大学生という役柄を超えて、社会の片隅のリアルを中村が一身に引き受けているかのような力強さがあった。

生と死が矛盾しない演技

 2017年に中村は入籍を発表した。同年、子宝にもめぐまれた。家族という社会集団を新たに得た時期に主演したのが、『命売ります』(BSジャパン、2018年)。原作は三島由紀夫。心に穴があいた虚しさから死に憧れる敏腕コピーライターを活写した、いかにも三島らしいテーマだ。  寺山の『田園に死す』でも夢と現実、生と死の狭間をさまよう少年を演じた中村が、三島作品に主演する流れはよく理解できる。実人生での結婚や子宝など、生きる喜びとは正反対のベクトルを向く主人公を演じる複雑さとは。  いや、そもそも生と死は相反するのではなく、むしろ同じベクトルを向いている観念なのだ。寺山や三島の作品を貫く基本的な考え方だが、生と死が矛盾しない中村の演技もまた社会の真実に肉迫するものだ。
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2025年大河ドラマへの期待
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