自炊と聞くと、手作りという言葉がまず連想されます。本来自炊の意味は、自分の食事のために自ら炊事、つまり調理を行うことです。
本書に登場する「自炊力」は「いろいろなスキルの総合力」。ひとことに料理といっても、その中には様々な工程がありますよね。

写真はイメージです(以下同じ)
本書による分類は以下になります。
「買い物に行って、その場で献立を考える」
「家にある食材とかけ合わせて何を作るか決める」
「食材の質と値段のバランスを考える」
「栄養バランスも気にかける」
「調理する」
「残ったものにそれぞれに適した状態でしまう、保存する」
この間に洗い物をする、ゴミを片付ける、等々の料理のサブ家事が加わりますから、料理などひとことで言っていられない労働力になるのです。
これを日々こなしている妻のスキル、つまり自炊力はかなりのもの。料理は必ずしも妻の仕事ではないし、料理があまり得意でない妻もいます。
単純に料理したくない日もあります。そんな時は出来合いのものでもいい、コンビニ飯でもいい。大切なのは、家族が食事を楽しくおいしくいただくこと。
夫や子供がそれぞれ自炊力をつければ、料理の大変さも理解してくれますし、妻の立場も変わってきます。まずは自炊力の自由さを知ってもらいましょう。
本書によると、「自炊をはじめるとして、作ってみたいものは?」の質問に対して「グラタン、おでん、カルボナーラ、揚げ出し豆腐、天ぷら、里芋の煮っころがし」などがあがったそうです。
けっこうハードルが高いと思いませんか。なんとなく挫折への一歩が見えてきます。

「料理をしていない人だったら、『料理する』よりもまず『料理に近づいていく』ことからはじめてほしい」と本書。スーパーのお総菜に何か付け加えてみる。野菜を刻んでもいいし、缶詰のツナやコーンをトッピングしてもいい。
意外なおいしさを発見したら、そこから新たな工夫がはじまります。「レトルトや出来合いのものに加えるだけでも立派な調理であり、自炊の一環」という、本書が推す自炊力は実に自由で可能性に満ちているのです。