それまで、アプリで知り合った男性とのデートの時には気に入られようと猫を被り、言いたいことも言えずストレスを感じていた明穂さん。でも「これがラストだ」と思うと、友哉さんには気楽に話しかけることができたそう。
「友哉さんが思っていた以上のイケメンだったこともあり、なんだか自分と付き合うなんて現実感がなさすぎたので、かえって力が抜けて緊張しなかったんですよね」

すると友哉さんは、ものすごく申し訳なさそうな表情を浮かべて「
実はそれが原因で女性となかなかうまくいかなくて……。明穂さんにも不快な思いをさせてしまっていたらすみません」と外見に似合わない自信のないオーラを全開で出してきました。
「
なんでこんなイケメンが覇気のない残念な仕上がりになっちゃったんだろう? と逆に興味が湧き、腰を据えて友哉さんの話を聞いてみようと思ったんです」
するとその原因は友哉さんの6歳上のお姉さんにあったそうで……。
「友哉さんのお姉さんはとても美人でスタイルが良く、とにかく人目を引くことで近所では有名で、
街をただ歩いたり電車に乗ったりしているだけでも、男性、特におじさんからジロジロと見られることが多かったのだそうです。
なかには一度すれ違ったのにまた戻ってきて回り込み、再度顔面や身体のラインを確認するような失礼なおじさんもいて。お姉さんはそんなことばかりの毎日に嫌気が差して引きこもりがちになり、精神を病んでしまっていた時期があったそうなんです」
他にも、電車で座っていると離れたところに立っていたおじさんがわざわざ真正面に座りに来て凝視してきたり、
ふと目が合っただけで自分に気があると勘違いしたおじさんに追いかけ回されたりと、数々の怖い思いをしてきたお姉さん。そのせいで、眼鏡をかけて帽子を被り下ばかり向いて歩いているそうで、そんな姿をずっと見ていた友哉さんは胸を痛めてきました。
「子どもの頃からお姉さんの隣で、品定めするように絡みつくような目線を送ってくる下品なおじさんを何人も何人も見てきた友哉さんは、『
あんな風に女性を苦しめるような大人にだけはなりたくない』と強く思ったそうなのですが……。それが原因で、女性を見ることも目を合わせることも、極端にできなくなってしまったそうなんですよ」