直言の判決が下ろうとする第24回では、今か今かと判決を待つ寅子の学友たちが法廷の外で待っていて、その中に優三もちゃんといる。でも相変わらず腹を下して、必死にこらえている。
あるいは、直言が無罪となり一家の騒動が収束した後の場面。寅子が初の高等試験司法科を受けるが不合格になったことを踏まえた家族会議では、母・猪爪はる(石田ゆり子)から寅子がきつく言われる雰囲気に耐えきれず、優三がテーブルにゴツンと頭を突いてみせる。
どうしてこの人はいつもこうなんだ。緊張を持ち前のゆるみで解いてしまう稀有な才能。それを演じる仲野太賀は基本的には二枚目俳優だというのに、あえて三枚目キャラを率先して引き受けて、細やかにおどける。
自分が試験に合格できないときにはさすがに落胆の表情を隠さないけれど、でも彼は場所を選ばず、どんな苦いシチュエーションでも人々を和ませる。単なる道化師のような三枚目なんかじゃない。内面化された二枚目的な誠実キャラなのだ。

彼の誠実さが最高点に達してにじむ、忘れがたい瞬間がある。1938年、高等試験に合格した寅子が日本初の女性弁護士になった朝の場面だ。合格者一覧に自分の名前はない。もう何度目の挑戦だっただろう。ここまでにして、弁護士になる夢は諦めよう……。
晴れやかな顔をした優三はそう心に決める。一覧からさっと目を離して、じっと間を置く。気持ちに整理をつけ、隣にいる寅子の合格への祝福に切り替える。なんていい表情をするんだ、仲野太賀。
いい表情ばかりが、演技の華ではないけれど、仲野が作る表情はちゃんとキャラクターの感情の上に成り立っている。奥行きのある、立体的な表情が、優三という人の心の動きをひとつひとつ丁寧に可視化してくれている。