「お金返して」「詐欺だよね?」脱毛クリニック大手の破産に客ら悲鳴…アリシアだけじゃない“倒産するサロンに共通する予兆”
2024年12月10日、医療脱毛大手のアリシアクリニックが突然「全店臨時休業」に。運営元の医療法人社団美実会、そして、姉妹院のじぶんクリニックを運営していた一般社団法人八桜会の2社が、東京地裁から破産開始決定を受けたニュースが波紋を呼びました。
全国40店舗以上を抱えていた人気クリニックはなぜ、突然の破産に至ったのか。過去に「300万円以上」もの施術代金を費やした消費者の立場から“脱毛業界の真実”を伝える人気ブログ「すっごい脱毛ブログ!」の運営者で、2011年から約13年にわたりアリシアクリニックを見てきた、脱毛研究家・六條かげりさん(@datumoushon)に話を聞きました。
東京商工リサーチによると、先の医療法人社団美実会と一般社団法人八桜会の2社合計で負債総額は124億7133万円。債権者は9万1818人で、多くは施術代金を“前払い”していた利用者です。
破産開始決定を受けた公式書面「『アリシアクリニック』の破産について」では「事業を停止していますので、予約の有無にかかわらず、今後、お客様が施術を受けることはできません」「未施術分の施術代を返金することは、極めて難しい状況」との記載もあり、SNSでは、当事者と思われるユーザーから「詐欺だよね?」「お金返して下さい」「なんでこっちが泣き寝入りしないといけない?」といった阿鼻叫喚の投稿が目立ちました。
予兆はあったのか。匿名質問サービスやSNSのダイレクトメッセージ、メールで過去に1万件以上におよぶ脱毛関連の質問に答えてきた六條さんは、アリシアクリニックの“Xデー”以前より「内部からの情報提供もあった」と明かします。
「脱毛への情報感度が高い方であれば、破産開始決定の1年ほど前から『倒産が近い』と感じていたはずです。数ある倒産事例のなかでも、かなりわかりやすいものでした。私の元にアリシアクリニックのスタッフを名乗る方から『場合によっては今すぐ倒産するかもしれない』と連絡が来たのは、2024年春でした」
東京商工リサーチによると「脱毛サロンなどエステティック業」の倒産件数は、2024年1~11月で99件。前年の88件を上回っています。
アリシアクリニックに類似した事例として、2023年12月15日には脱毛サロン「銀座カラー」を運営していた株式会社エム・シーネットワークスジャパンが、負債総額58億円、債権者約10万人で東京地裁の破産開始決定を受けるなど、その過程では六條さんも“脱毛バブル崩壊”を予感していたといいます。
「アリシアクリニックについては、2019年12月に無制限の“通い放題”プランを廃止した時点で危ないとは思っていました。その後、2023年内に湘南美容クリニックが料金を大幅値下げしたことで医療脱毛業界の潮目が変わり、低価格化が加速したんです。アリシアクリニックは、前受金(後述)と過去の無制限プランの負担の構造が、倒産した銀座カラーと似ていました。
そこに加えて、医療脱毛業界の一角として低価格化へとシフトせざるをえなかったのが、破産のきっかけになったとみています。そして、2024年7月にアリシアクリニックが姉妹店の『じぶんクリニック』を統合した時点では、すでに時間の問題で、新規契約が入りやすい夏にお金を集めてから、倒産へ向かうのだろうと見込んでいました」
一部の専門家は、客が前払いしていた施術代金“前受金”を頼りにするずさんな経営方針が、破産の大きな要因となったと指摘。前受金による経営は、脱毛業界では一般的といいます。
「前受金でのビジネスモデルには、短期間で大きな資金を集められるメリットがあります。ただ、あくまでもお客さんからの預かり金で、いわば“借金”であると自覚しない脱毛サロンも少なくありません。一般的に、脱毛サロンでの契約時は数回分~十数回分を先払いするケースが多いです。サロン側はそれを新規店舗の開拓費用や広告費にあてて、規模拡大を図ります。
ただ、新規店舗をオープンしたとしても、延々と新規契約者が増えるわけではありません。いずれは新規契約数が鈍化しますから、次第に経営は圧迫されます。さらに、お客さんからの前受金をすでに使い果たしているとしても店舗では月々の経費がかかります。その時々に来る新規契約者の前受金をたよりにして経営する、自転車操業に陥ってしまうんです。アリシアクリニックに限らず、手元の資金が満足にないまま維持を続け、結果、倒産した脱毛サロンも少なくないのが現状です」