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「徹底した無表情で…」話題の新ドラマで41歳俳優のシーンに”違和感を抱いた”ワケ

水餃子を咀嚼するアップ

 お互いが警察関係者であることがわかったふたりは、有木野が勢いにのまれる形で麻里が半ば主導権を握る。「晩ゴハンでもどー?」とさっそく麻里から連絡がくる。「予約したから!」と連投で連絡がくる。  有木野は呼びだされた中華料理屋に赴く。ここでも麻里が注文するのは、見たことも聞いたこともないような、ゲテモノ料理ばかり。有木野はさすがに水餃子を頼む。  無表情を崩さず、中国語で水餃子を注文するさりげない感じがいい。面白いのは、その水餃子を頬張る松田のアップが写され、咀嚼する微動をわりと時間を割いてカメラが捉えることである。

デビュー作を思いだす自然現象

 なんだか変なワンショットだなと思った。ちょっとだけ違和感すら覚える。食事場面での単純な時間経過にしては、咀嚼する微動を執拗に撮り過ぎているからだ。  口元だけの微動とはいえ、それまでの場面では微動すら封じ込めていたはずの松田龍平をどうしてこの中華料理屋では動かそうとしたのか。松田龍平による松田龍平のためだけに演出されたような、この微動……。  有木野の謎めいた過去が徐々に明かされようとする第2話ラスト、有木野は、馴染みのバーカウンターで年若い男性・シウ(紘瀬聡一)に話しかけられる。お互いに何者なのか。素性を探ろうとするその男性が隣の席まで来る。有木野の右頬に不意に口づけする。  口づけを受け、さらに「ね、ここ出てどっか行かね?」と誘われた有木野は、やや間を置いて彼の方を向き「また今度な」と軽やかにかわしてみせる。口づけも横を向く動きも微動を極めたような繊細さだ。ホモセクシュアルの雰囲気濃厚な一方的な口づけがいきなり挿入されることにどんな意味があるのか?  水餃子を咀嚼するアップに対して抱いた違和感は、この唐突な口づけの衝動につながっているのか。松田龍平のその頬に、同性の男性が吸い寄せられることがあたかも自然現象であるかのようなこの場面を見ていると、松田が大島渚監督作『御法度』(1999年)でデビューしたことを思いださずにはいられない。 <文/加賀谷健>
加賀谷健
コラムニスト/アジア映画配給・宣伝プロデューサー/クラシック音楽監修 俳優の演技を独自視点で分析する“イケメン・サーチャー”として「イケメン研究」をテーマにコラムを多数執筆。 CMや映画のクラシック音楽監修、 ドラマ脚本のプロットライター他、2025年からアジア映画配給と宣伝プロデュース。日本大学芸術学部映画学科監督コース卒業 X:@1895cu
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