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「2027年大河ドラマ」主演に抜擢された36歳俳優に期待できるワケ。過去作の“ぐうたらキャラ”も

コンパクトに整頓された人物像

 同作の主人公・御上孝は、文部科学省から有名私立高校・隣徳学院の高校教師として派遣されてきた。主任教師・溝端完(迫田孝也)に、御上が「官僚はいつ何時何を聞かれてもすぐにデータを出せないと無能呼ばわりされる悲しい仕事なんです」と涼しい顔で嫌味な説明をするように、スマートな情報処理能力によって、彼は教育現場をアップデートどころか、根底から改革しようと心に決めている。  会話のテンポはすこぶる早く、隙がない。いつでもタブレットを片手に、その場に必要なレファレンスを即座に取り出せる状態にある。溝端のような旧来型の教師からすると、下らない思惑や慣例が通じない相手である。  かといって高圧的なわけでもない。知識をひけらかす感があるにはあるが、嫌らしいわけでもない。あらゆることに興味があり、誰も知らないような動物の話題をさっとタブレットに出して、ほとんど一方的だが、簡潔な解説を披露する。私生活もよくわからないが、食事は霞ヶ関のいきつけで中華屋か夜はコンビニ弁当。すべてがコンパクトに整頓された人物像である。

俳優としてのセルフイメージが明確

 小栗忠順の略歴に戻ると、さらに「花や酒には目もくれず治水について語り続け、周囲をあきれさせるようなオタク気質」とざっくりキャラクター設定が説明されている。御上と同一人物とまではいかないが、オタクレベルはかなりの近似値。近年の松坂桃李が演じるキャラクターは、あまり遊興を好まない折り目正しいオタクが多い気がする。  それに対して松坂はキャラが決してブレないように工夫している。キャラクターの内面と外面のバランスを完璧に保ち、その均衡状態をコントロールするような役作りを心がけているように思う。  俳優としてのセルフイメージが明確なタイプである。そのくせ、あのくしゃっとした特有の笑顔をどの役にものぞかせて、松坂印をしっかり刻印している。その松坂スマイルの塩梅と偏差で器用に役柄を識別してもいる松坂は、折り目正しいオタクキャラだけを得意にしているわけではない。
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ぐうたら演技こそが松坂桃李のイメージ
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