「ヤバい! と思ってすぐに原田課長たちに背を向けました。そしたらトイレが空いたので慌てて中に入ったのですが……正直、私が目撃してしまったことがバレてしまったのか、
目が合ったのはほんの一瞬だったのでバレていないのか、微妙な線でした。トイレから出るともう2人はいませんでしたね」

そして週明けに出勤してみると、芽衣さんに対する原田課長の態度が明らかに変わっていたそう。
「
露骨に愛想が良くなっていて『あぁ、やっぱりあの時に目が合ったのが私だと気がついたんだな』と思いました。でも私にだけ急にニコニコ優しく接するようになったら、他の皆におかしく思われるからやめてよって感じで」
「よっぽど南さんとの関係をバラされたくないんだな」と思った芽衣さんは、あの日見たことは胸の中にしまっておいてあげようと思いました。
「原田課長が私のご機嫌取りをしているうちに、
他の皆にも柔らかい態度で接するようになって仕事がやりやすくなったので、まぁいいかなと。不倫は良くないことですが、部外者の私がとやかく言うことでもないかなと思ったんです」
ですがそれから数週間後。また原田課長の管理能力が足りないせいで仕事が上手く回らず、イライラした彼が芽衣さんに嫌味を言いながら強く当たってきたそう。
「その少し前から、
ちょいちょい以前のような横柄な態度が顔を出すようになってきていて……きっと私がもう原田課長の不倫を皆にバラさないと安心しきって、図に乗ってきたのかな? と思っていたんですよね。いや、そんなわけないだろ? と頭にきて、つい
部内でいちばんおしゃべりで噂好きの女性へ、事細かに話してやったんですよ」

すると瞬く間に噂は広まり、部内で原田課長と南さんは変な目で見られるようになりました。
「南さんは同僚たちに『変な噂が広がっているみたいだけど、断じてそんな事実はないんです。
デマを信じないでください』と言いまくり、懸命に火消しをしているようでしたね。原田課長はすっかり高圧的な態度に戻り、私への当たりは当然厳しいですが……私の仕返しのせいで上層部に呼び出されたりと相当面倒なことになったと思うので、正直胸がスッとしたなって感じです」