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夫の死を願う妻、女郎屋の女将…「43歳の安達祐実」が“ゾーンに入っている”と言えるワケ

ゾーンに入った安達祐実

 ドラマの要所で虚ろな表情を浮かべ、口元を歪ませる安達祐実が悦に入ったように見える。演技が上手いとか、夫を抹殺したいと願う主人公の狂気をにじませる心情表現が上手いとか、そういうことじゃない。  演技や表現を超えた何か。安達祐実にしかアウトプットできない圧倒的に強烈な固形物(?)みたいな。ゾーンに入った安達祐実。主人公の紙一重の狂気が安達祐実に張りつき、狂気の一粒一粒が、目元と口元にはめ込まれ、結晶化したとでもいえばいいのか。  横浜流星主演の大河ドラマ『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』(NHK総合)では、吉原の悪辣な女将役を演じているが、眉毛のないビジュアルによって、江戸時代に舞台が置かれた作品でも目元と口元をくっきり浮かび上がらせて、怪しい雰囲気を醸している。

ドラマ間の連動で狂気は補強される

『夫よ、死んでくれないか』第2話で、いつもの愚痴会帰りの麻矢が、ある女性(松下由樹)とすれ違って話しかけられる場面がある。その女性は麻矢を知り合いと勘違いして「レイナ?」と声をかけるのである。 「レイナ」とは、松下が狂乱のマネージャー役を演じるドラマ『ディアマイベイビー~私があなたを支配するまで~』(以下、『ディアマイベイビー』)に登場するアーティストの名前である。松下由樹演じる敏腕芸能マネージャーが、育て上げた国民的女優・垣内麗奈(安達祐実)から裏切られたという因縁の関係性がある。  同作第1話冒頭、芸能事務所の場面で、麗奈がその場から微動だにせず、静かに捲し立てる表情が強烈である。場面途中で片足一歩だけ近寄る画面上、目元と口元にぴりりと辛い狂気が一瞬浮かぶ。 『夫よ、死んでくれないか』と『ディアマイベイビー』で安達が演じる役柄は違うとはいえ、『夫よ、死んでくれないか』にやや唐突に松下由樹を登場させ、ドラマ間の連動で狂気は補強されるのである。 <文/加賀谷健>
加賀谷健
コラムニスト/アジア映画配給・宣伝プロデューサー/クラシック音楽監修 俳優の演技を独自視点で分析する“イケメン・サーチャー”として「イケメン研究」をテーマにコラムを多数執筆。 CMや映画のクラシック音楽監修、 ドラマ脚本のプロットライター他、2025年からアジア映画配給と宣伝プロデュース。日本大学芸術学部映画学科監督コース卒業 X:@1895cu
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