
カイくん小2、コビくん幼稚園生の頃に使っていたスクールバス
――アメリカの学校では、なぜ熱心に指導する教師が少ないのだと思いますか?
悠子:教員の給料が安いので、「余計なことまでやってられない」という考えになるのだと思います。副業がOKなため、子どもの担当だった教師は授業が終わるとさっさとブライダル関係の仕事に行っていました。
もちろん人によりますが、アメリカで教師になる理由の多くは、「夏休みは仕事が無いので、自分の子どもと一緒に過ごせるから」だと思います。日本のように夏休み中に研修会に参加したりしないので、仕事が完全にゼロなんです。
――学校に対して、保護者は不満を感じていないのでしょうか。
悠子:教育現場に不満がある人は、子どもにホームスクール(学校に通わずに家庭を拠点として学習を行う教育方法)をさせています。でも、親が家で子どもに勉強をさせるのはすごく大変だと思います。ホームスクールをさせているお母さんたちはよく、「ガールズナイト」といって、お母さん同士で誘い合って夜飲みに行く人が多かったような気がします。子どもと離れる時間がある程度必要なのかもしれません。
地域にもよると思いますが、「学校は友達と付き合うための場所」という意識の人が多いとコビはよくいっていました。私たちが暮らしていた住宅地はお金持ちが多く、保護者は、子どもに高価な服や靴、サングラスなどを身につけさせて、「うちの子が1番人気者なのよ」と自慢することを競い合っています。表立っては言いませんが、勉強やスポーツに一生懸命な子よりも、「プロム(学年末のパーティ)でクィーンやキングになる子が一番クール」という暗黙の了解があると感じます。本来の「学校に行く意味」とはズレがあるなと思いました。
――アメリカの学校では、安全面に関しても不安があったそうですね。
悠子:一番恐ろしかったのは子どもが通っていた中学で、高校との合同音楽祭があったときに、銃を持った高校生が来たことでした。学校に常駐している警察官が取り押さえたところ、「学校で自殺しようとした」と言ったそうです。聞いたときは胸が凍りつくような思いで、すぐにでも子どもを日本に連れ帰りたくなりました。
また、性的な問題やドラッグ、アルコールの問題もあります。高校では、ドラッグが蔓延している状況が当たり前になっていました。
――悠子さんたちが暮らしていたのは、治安がとても良い地域だったそうですが、それでもドラッグの問題があったのでしょうか。
悠子:治安が良い地域は裕福な家が多いからこそ、ドラッグを買うお金があるので蔓延しやすいんです。だからといって貧困層は大丈夫というわけではなく、数年前に貧しい地域の高校生の子がドラッグを買うお金欲しさに老夫婦に強盗をした事件が近所で発生しました。お金があっても無くても、ドラッグの問題は避けられないんです。