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大ヒット朝ドラ出演の32歳俳優が“世界的バレエダンサー”の指導を受けたワケ。超ナルシストをコミカルに

 毎週木曜日深夜1時29分から放送されているドラマ『バレエ男子!』(MBS)で、主人公・小林八誠役を演じる戸塚純貴が、やたら姿勢がいい。タイトルにあるように、バレエダンサー役を演じているからだが、ドラマ本編にはカメラ目線で背筋ピンの戸塚がタイトルをコールする幕間的映像まである。
『バレエ男子!』(MBS)

『バレエ男子!』(MBS)

 冷静に見たら、気が散るくらい風変わりなバレエ男子たちの生態。なのに、とびきり魅力的に写る。本作のバレエマジックがある。バレエ初挑戦の戸塚に対して、作品全体の監修と指導を担当したのは、世界的バレエダンサー草刈民代。  監修者による秘技を得て、戸塚純貴史上もっとも背筋がピンとした作品となった本作の魅力とは? 男性俳優の演技を独自視点で分析する“イケメン・サーチャー”こと、コラムニスト・加賀谷健が解説する。

クスッと意外性がある配役

『バレエ男子!』(MBS) 福田雄一組の常連俳優であり、三枚目キャラを演じたら、そりゃもう天下にその名が轟く戸塚純貴が、バレエダンサー役を演じる。この意外性からして早くも本作『バレエ男子!』は、面白いに決まってる。  意外性と同時にクスッと感もある。もちろんバレエは初挑戦。だからこそいつものようにコミカルな方向でまとめあげ、自分が得意とする領域に引き寄せるのかどうか。意気込み十分、新たな役柄を得て挑む第1話冒頭、やっぱり戸塚純貴は戸塚純貴である。最高だ。  戸塚演じる主人公・小林八誠が所属する小森川バレエ団の練習風景。レッスンスタジオでは、チャイコフスキーがスイス滞在中に作曲して1881年に初演された『ヴァイオリン協奏曲』(ぼくが普段身を置くクラシック音楽業界では、親しみを込めて「チャイコン」と呼ぶ)がピアノ伴奏でしめやかに鳴り響く。  チャイコフスキーと戸塚純貴という、これまた意外性ある組み合わせ。でもここでもしっかりクスッとさせてくれる。この緩急、弛緩と緊張のバランスが絶妙過ぎるんだよなぁ。

とっておきのバレエ喜劇

『バレエ男子!』(MBS) 左手をバーに乗せ練習に励む八誠は、頭の中でバレエに対する一般的イメージ論を展開している。いや、論というには簡略化が過ぎるかも。「ほとんどの人が女性が華麗に踊る姿を想像する」と説明するが、男性の踊り手に対しては?  八誠曰く「我々男性ダンサーのイメージなんて、まずはもっこりだったり」。本作のタイトルでもある“バレエ男子”を説明するのに、このキーワードなのか……。2014年に公開され、ミニシアター界隈で話題になった、大真面目なバレエ男子たちのドキュメンタリー映画『バレエボーイズ』では、もちろんそんなワードは説明されていなかった。  いやいや、『バレエ男子!』が真面目でないわけではない。自分大好き超ナルシストなバレエダンサーである八誠役を水を得た魚のようにコミカルな存在として浮き上がらせるためには、これくらいのキーワードは必須ということ。そういうワードの扱いは朝飯前だという感じで、戸塚のやわらかな表情とモノローグに託せば、とっておきのバレエ・コミック(バレエ喜劇)がほとんど自動的に生成されるというわけ。
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本作のバレエ監修と指導を担当する草刈民代
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