「専業主婦は甘えすぎ」大バッシングの年金改革が“結婚制度”を崩壊させるワケ
結婚は「支え合うための制度」ではなくなりつつある
そもそも、男女の性別役割分担をベースとして経済を成長させながら社会を維持してきたこれまでの結婚制度。
しかし、男性が仕事をし、女性が家庭を守るという性別役割を前提とした従来のシステムが、現代社会では破綻しつつあります。このような結婚観では、片方が亡くなった時に家庭が崩壊してしまうことから、国が手当を実施してリスクを軽減するのが当然とも言えます。
一方で、遺族年金の見直しは、国が従来の考え方を否定しており、結婚に伴うデメリットやリスクを加速させているように思えます。「男性は外で働き、女性は家を守る」といった性別役割分担や、「1人ではできないことを2人で支え合う」というシステムによって、結婚という制度は存続してきました。
しかし、男性の1馬力では生活できないほど経済が低迷し、政府もまた女性の社会進出を後押ししてきた結果、結局は女性が仕事も家事も育児もすべて担わされるという不都合が生まれています。
現代の女性は、家族を支えるためにパートや専業主婦を選ぶリスクがあまりにも高すぎる一方で、子育てをしながらフルタイムで働き、高収入を得るのはさらにハードルが高いという板挟みの状態に置かれています。
これでは「結婚をしたくない」「子どもを産みたくない」と考える女性が増加するのは自然なことでしょう。「結婚」という制度自体が、かつてのセーフティネットとしての役割を失いつつあるように思われます。
60歳未満で長年専業主婦をしていた女性が再就職できるのか
表面的には男女平等を目指した制度とはいえ、現実的には年金の支給額を削減する目的が透けて見えます。現代の女性の働き方や専業主婦の実態を無視した制度改正という批判も根強いです。
特に、60歳未満の専業主婦が、長年家庭にコミットしてきた後で社会に復帰し、自活できる経済基盤を5年の間に整えられるかどうかには疑問が残ります。
2024年、日本国内で生まれた日本人の子どもの数は68万6061人となり、初めて70万人を下回りました。遺族年金5年案が導入されることで、結婚や出産をリスクと捉える人々、特に女性がさらに増加していくのではないでしょうか。
<文/エタノール純子>エタノール純子
編集プロダクション勤務を経てフリーライターに。エンタメ、女性にまつわる問題、育児などをテーマに、 各Webサイトで執筆中
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