Entertainment
News

「深く深く失望…」監督からの“ヌード強要”を告発した元女優が明かした“まさかの事実”

『時には懺悔を』試写を鑑賞して

 筆者個人としては、映画『渇き。』におけるA子さんへのヌード強要は、園子温監督や榊英雄監督らが告発された「権力勾配を利用した自身の欲望を満たすための性加害」とは本質が異なる問題でもあり、そちらと完全に同一視するべきではないとも考える。  また、『時には懺悔を』製作委員会が問題を詳しく調査、検証する姿勢を発表した以上、その結果しだいでは、ある程度の信頼を得る可能性もある。少なくとも現状では「公開を中止する」などといった対応は時期尚早だろう。  作品の良し悪しで問題を判断するべきではないことは重々承知の上だが、筆者は3月に試写会で『時には懺悔を』を鑑賞しており、とても素晴らしい作品だと思えたことも記しておきたい。実際の障がい児が出演する、極めてセンシティブな題材であるのだが、綺麗事からも欺瞞からも逃げずに向き合ったことが、豪華キャストの熱演や、先が気になるエンターテインメント性もある物語から、大いに伝わったのだ。  同試写会では中島監督の他、プロデューサーの前田利洋さん、理学療法士でスペシャルニーズスーパーバイザーを務める安田一貴さんが登壇しており、それぞれが実際の障がい児へ真摯に向き合う意志が伝わった(そのレポートは公式のtumblrやXで読むことができる)。  1月21日の公式サイトに掲載された文章では、インティマシーコーディネーターの起用、重度の障がいがある子どものケアに精通している専門家や、救急救命士の資格を持つスタッフの撮影現場の常駐、ハラスメントが発生しないように徹底した注意喚起が行われるなど、中島監督の過去の問題と同様のことが起こらない、出演者の負担にならない制作体制が敷かれていたこともわかる。

信頼を取り戻すことは容易ではない

 だが、やはり現状では、いかに作品が素晴らしくとも、万全の制作体制を敷いていたとしても、その他の多くの対応が不誠実だったと言わざるを得ない。『時には懺悔を』を発表する前に、中島監督の過去の問題の調査と検証、A子さんへの謝罪と説明が行われていたら……と「もしも」を想像してしまう。  特に「監督の過去の性加害に向き合わずに新作を発表した」ことの問題はとても重く、その結果としてA子さんと観客と関係者の信頼を大きく失ってしまった。その信頼を取り戻すことは容易ではないし、ここまでの長期の公開延期は、商業上でも大きなマイナスになるだろう。  だからこそ、『時には懺悔を』制作委員会の「この問題をさらに詳しく調査、検証すべき」という声明を、今は信じたい。中島監督と関係者が、A子さんの認識と異なる部分も含めて擦り合わせ、一方的ではない改めての謝罪と説明があってほしいと願うしかない。多くの人が納得できる形になることを、祈っている。 <文/ヒナタカ>
ヒナタカ
WEB媒体「All About ニュース」「ねとらぼ」「CINEMAS+」、紙媒体『月刊総務』などで記事を執筆中の映画ライター。Xアカウント:@HinatakaJeF
1
2
3
Cxense Recommend widget
あなたにおすすめ