また、発達障害はADHD(注意欠如・多動性障害)、ASD(自閉スペクトラム症)、LD(学習障害)といった種類があり、特性の濃淡もあるのにどの障害の特性が濃いのか、具体的に何に困っているのか聞かれるのかと思っていたら、そのようなことは聞かれなかった。産後うつで参っていた知人も、具体的なアドバイスをもらえなかったとのことだったので、障害者や本当に困っている人へ向けたサポート知識が不足しているのではないかと感じた。
保健師さんとの面談は不信感ばかりではなかった。国の出産育児一時金に加え、東京都独自の制度で妊娠・出産給付金やベビー用品購入券、産後ケア入院費助成など、出産や育児にかかる費用の多くがカバーされていることがわかってきた。都内で出産した人たちの中には、「偉大なる母、百合子……」と冗談まじりに称える声も少なくないのもうなずける。
それに、産後ケア入院については初めて知った。初めての育児で母乳のあげ方も沐浴の仕方も何も知らない。みんなどこで習っているのか不思議だったが、産院で助産師さんから習ったり、このようなサービスを利用したりしているようだった。

保健師さんとの面談からしばらくして転院後初の妊婦健診に行った。前の病院の医師が予約を取ってくれて、予約表に11時半と記入してくれていた。しかし、その下に小さく「初診の場合は30分前に来ること」と書かれていたのを見落としていて、家を出ようとしたときになってようやく気づいた。
今から行くと確実に遅刻だ。早足で向かって、11時20分頃に到着。総合病院なのでやたらと広い。入口を探すところから始めた。入口には大きく「マスクをしていない方は入れません」と書いてある。病院に行くときはいつもマスクをつけているのに今日に限って忘れてしまった。
ハンカチで口元を抑えながら総合受付で「マスクを忘れてしまったのですがどうすればいいですか?」と尋ねた。すると、マスク販売機でマスクを買ってつけるよう言われた。
マスク販売機に100円硬貨を入しれ、マスクを購入。その場でマスクをつけた。さて、これからどこへ行けばいいのだろう。また、受付で聞いて初診の手続きをして産婦人科へ向かった。
産婦人科の受付で母子手帳を出すよう言われ、トートバッグの中を探るも見当たらない。マスクに続いて母子手帳まで忘れてしまったのだ。ADHDの忘れ物癖、妊娠がわかる前まではADHDの治療薬を飲んである程度改善できていたが、妊娠判明後にその薬が飲めなくなり、さらに今回は遅刻確定に焦って持ち物のチェックをしていなかった。受付の人によると母子手帳がないので前の病院の先生に電話をして引き継ぎを行うとのことだった。
やってしまったと思いながら、受付の人に言われたとおり、尿検査のためトイレに向かった。その後、血圧と体重を測るよう言われたが、算数LDで方向感覚が鈍いため、広い院内のどこに血圧計や体重計があるのか、ついさっき聞いたのにわからない。そのため、一つの測定が終わるたびに看護師さんに血圧計や体重計のある場所を聞いて回る羽目になってしまった。