また、「制作費の削減」という点において、別の理由もありました。

『こんばんは、朝山家です。』(テレビ朝日系)公式サイトより
「脚本家や作家など、
作る側が取材の手間なくイメージしやすいという点があるかもしれません。医療もの、刑事ものはもちろんのこと、ある特定の業種を深く描くためには取材や監修が不可欠です。しかし、業界モノであればその必要がありません。
作家が不精をしているわけではなく、メインがお仕事以外にあるのであれば、綿密な取材の手間なくストーリーや内面にフォーカスして深堀できるんです。
ブギウギの脚本を執筆し、『こんばんは、朝山家です。』でも演出・脚本を担当する足立伸先生の作品には、自身と同じ脚本家や、映像業界に携わる人がよく出てきています。それもあって、どの職業であっても共通する情けない人間の内面を深く描けるのだと思います」(脚本家・Aさん)
また、現実の業界ではありえなかったり多少無理がある設定でも、メディアの当事者が作っているということによって、説得力を出すことができると言います。
「例えば『キャスター』で、永野芽郁さんが演じていた総合演出というポストは、永野さんの年齢では、現実的にあり得ません。『続・続・最後から2番目の恋』の内田有紀さんのポジション(局内にデスクがあり、プロデューサー専属状態の脚本家)も現実では聞いたことがない。

日曜劇場『キャスター』(TBS系)公式サイトより
他業界をそんなご都合な設定で描いたら、非難がきそうですが、
“メディアの当事者がそう描いているんだから、そういうこともあるんだろう”と、視聴者が錯覚できるんです。同業者もフィクションであることを理解しているので、野暮なツッコミはほぼありません」(制作会社のディレクター・Wさん)
増えすぎるのも考えものですが、近年の業界モノは名作ぞろいが多いのも確か。今後、マスコミ業界モノが、医療ものや刑事ものに次ぐ欠かせないジャンルになる日も近いかもしれません。
<文/小政りょう>
小政りょう
映画・テレビの制作会社等に出入りもするライター。趣味は陸上競技観戦