婚姻届を「紙切れ1枚」と言う男性はいるが、その紙切れ1枚に、どれだけ女性たちが縛られているだろう。「○○さんの妻」「○○さんの嫁」「○○ちゃんのママ」と呼ばれ続け、「私は私だ」と叫びたくなることもあるのではないか。子どもたちが自分の意思を持ち始めた今なら、呪縛から逃れて「個人名をもったひとりの人間」としての再スタート地点に立つことができるかもしれないと思っても不思議はない。

写真はイメージです(以下同じ)
45歳のときに離婚届を出し、その後、下の子が大学に入学するまで5年間、「それまでと同じ形での生活」を続けたマリさん(52歳・仮名)がこう話してくれた。
「離婚届を出して、肩の荷が下りたような気がしました。もちろん子育ての責任はまだ続くけど、夫を見ながら『この人の妻ではなくなった』とうれしかった。夫と同じ空間にいるのが嫌というほどではなかったけど、価値観も将来への展望も合わない人と夫婦でいるのがつらかったんです。
離婚届を出して、これで他人だと思ったら、なんとなくイラッとすることも放置できるようになったので、離婚後の同居家庭は穏やかでしたね」
離婚後、彼女は子どもたちの協力を得て、仕事を続けながらキャリアアップのための勉強もオンラインで始めた。自分ががんばればがんばるほど、「
やっぱり夫はいらない。子どもたちの父親としてだけ存在してくれればいい」という思いが強まったという。
変化を続けるしかない妻は、強くたくましくなっていく
結婚した時点で、大きな変化を余儀なくされる妻は、その後も望むと望まないとに関わらず変化を続けていくしかない。そしてその変化の中で、妻は強くたくましくなっていくのかもしれない。結果、子どもが大きくなったころには夫とは相容れない気持ちが強まっている。

もし結婚生活の中で、「ともに歩めている確かな感覚」があれば、夫婦としての今後の展開も見えていた可能性はある。あるいは夫が「変化を続ける妻」に少しでも歩み寄ろうとしてれば……。だが考えてもしかたがない。
「うちは離婚から5年たった50歳のときに、家族が完全にバラバラになったけど、不思議なことに今も、たまに4人で集まって食事をしたりしているんですよ。
あのまま離婚せず、私ひとりが我慢を続けていたら、今の家族関係はなかったと思います」