もちろんその日もリモコンをしっかりといつもの場所に置き、家を出たそう。
「『どうせ帰ったらまたリモコンがなくて怖い思いをすることになるんだろうな』と重い足取りで部屋に入ってみたら……
いつもの場所にリモコンではなく見慣れない小箱があって。恐る恐る中を見てみたらなんと指輪が入っていたんですよ」
するとクローゼットが開き、中から健太さんがクラッカーを鳴らしつつ飛び出てきて、花束と共に「僕と結婚してください」と片膝をつきプロポーズしてきました。

「私はビックリしすぎてしまい、あまりのことに頭がついていかなくて、『何で名古屋にいるはずの健太がここにいるの? リモコンの場所に指輪って? え? え?』とパニック状態でしたね」
話を聞くと、実は出張で数日前から東京に来ていた健太さんは、昼間に絵梨子さんの部屋に合鍵で忍びこみリモコンの位置を変えていたそう。
「『
不思議な出来事の後にプロポーズしたら、“吊り橋効果”っていうの? それで僕のことをさらに好きになったり、盛り上がったりして記憶に残るプロポーズになるかなって思って』と健太はあっけらかんと言っていましたが、吊り橋効果ってそういうことじゃないと思うし、私は心霊現象だと思い込み心底ビビッていたので、思わず腰が抜けたようになり崩れ落ちてしまいました」
ですがリモコン事件の真相がはっきりして、しかもずっと待っていたプロポーズをしてもらえたことにホッとした絵梨子さんは、だんだんと嬉しい気持ちが溢れてきて泣いてしまいました。
「そして健太に、恐ろしい思いをしたことや寂しかった不満をぶつけつつ『でもいいよ。結婚してあげる』とOKしたんですよ」
思いのほか絵梨子さんを怖がらせてしまっていたことを知った健太さんは、申し訳なさそうに謝ってくれたとか。
「健太的には“プチドッキリ”ぐらいの感覚だったみたいなんです。でもそのお陰で新婚旅行は私の好きなところに決めていいと言ってもらえたので、どこにしようかワクワクしながら悩んでいるところなんですよ」と微笑む絵梨子さんなのでした。
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<文・イラスト/鈴木詩子>
鈴木詩子
漫画家。『アックス』や奥様向け実話漫画誌を中心に活動中。好きなプロレスラーは棚橋弘至。著書『女ヒエラルキー底辺少女』(青林工藝舎)が映画化。Twitter:
@skippop