――子どもの発達について相談をするときに、療育センターや保育園・小学校の先生に嫌なことを言われたという話もあります。
さわ先生:専門家に相談したとき、こちらが求めていないアドバイスをされてモヤモヤしたという話はよく聞きます。相談する前にまず目的を伝えることが大切です。「今日は話を聞いてほしい」「診断してほしい」と伝えます。
相談当日には子どもの様子や困っていることをすぐに伝えられるよう、日頃からメモをしておいて相談すれば、専門家との話もスムーズに進むと思います。
――たしかに、子どもの様子をとっさに思い出すのに時間がかかりそうです。
さわ先生:そうですね。学校の先生に言われたことや出来事は箇条書きにしておくとわかりやすいですし、相手にも伝わりやすいです。どんなことに困っているのか、何があったのか、事実をベースにメモしておくと安心ですよ。
あとは1回の相談で解決しようと思わないことも大事ですね。
――保育園や学校で先生と話し合いがうまくいかないケースもあると聞きます。
さわ先生:担任の先生もいろいろな方がいるので一概には言えませんが、児童精神科の立場からすると、保育園や学校の先生はその年代の子どもたちを間近で見る機会が圧倒的に多いです。病院では診察時間に限りがありますが、先生たちは日常をよく知っています。ですから、「この子は発達に違和感があるかもしれない」と感じる先生の視点は、私たち専門家も信頼している方が多いように感じます。もちろん、その言葉を鵜呑みにせずにしっかりと診療します。
――親にとってはセンシティブな内容なので、先生の言い方によってはトラブルになりやすいですよね。
さわ先生:そうですね。どう伝えるか、言い方や信頼関係の築き方には十分な配慮が必要です。ただ、私が多くの家庭をサポートしてきて思うのは、親と先生が対立することは、子どもにとってマイナスな影響を与えることがあるということです。
親も学校の先生も、子どもを育てるチームの一員です。困っていたり、集団生活になじめない子どもがいた場合、チームのメンバーで「どうしたらこの子が生活しやすくなるか」「周りの子どもたちも穏やかに楽しく過ごせるか」を一緒に考えることが大事です。環境を整えるのは学校の先生、アドバイスをするのは専門家の役割です。ですから、「先生VS保護者」の構図になるのは、結果的に子どものためにならないと私は考えています。