新たな“コミカルダンディ俳優“に?悪役を愛嬌たっぷりに演じてしまう45歳俳優の魅力
9月30日に最終回を迎えた森川葵主演ドラマ『スティンガース 警視庁おとり捜査検証室』(フジテレビ系、2025年)で、警察官僚役を演じた玉山鉄二が、すこぶる胡散臭かった。常ににやけ面でおどけてばかりいる。
でも部下思いでいい人ではあるのだろうと思っていたら、実は黒幕だった。本作の玉山鉄二は、コミカルな名調子で、最終的にこの役を愛嬌のある悪役に仕立てた。
男性俳優の演技を独自視点で分析する“イケメン・サーチャー”こと、コラムニスト・加賀谷健が、“コミカルダンディ”俳優・玉山鉄二を解説する。
森川葵主演ドラマ『スティンガース 警視庁おとり捜査検証室』(以下、『スティンガース』)で、玉山鉄二が演じる警察庁審議官・西条巧が、やたらにやけている。
第1話序盤で初登場する西条は、警視庁内に新たに創設する囮捜査検証室、通称スティンガースについて説明している。警察幹部相手に最初は官僚的な人物かと思った。
ところが、スティンガースの必要性を力説する西条がやや大げさにジェスチャーし始めると、何だか一気に胡散臭い。幹部の一人がおとり捜査が犯罪を誘発するのではないか懸念すると、「だから日本の警察はダメなんですよ」と語気を強める。そして人差し指で相手を牽制する。
西条はスティンガースの室長としてFBIで優秀な実績を上げた二階堂民子(森川葵)を抜擢する。審議官室にきた二階堂が、捜査資料を貸してほしいと頼むと、西条は「構わないよぉ~?」と語尾をやけに伸ばしてにやける。
「構わないよぉ~?」とにやける警察官僚
キャラに忠実な西条役
警察庁の審議官というと、警察組織のトップエリートである。にもかかわらず、こんなににやけていていいのか。というか、どうしてこんなににやけてばかりいるのか? 答えは簡単。本作の警察官僚役はそういうキャラだから。 自分のキャラに忠実な西条は、上述したジェスチャー以降、全然キャラがぶれない。それどころか、どんどんコミカルにおどけてばかりいる。二階堂とはどうも阿吽の呼吸らしい西条が、捜査一課から異動した乾信吾(藤井流星)の働きぶりをたずねる。 二階堂が「文句言いながらもがんがん動いてくれてます」と言う。西条は「あいつも学生時代ラグビーやってたから」と返して、ラグビーボールをエアーで思いきり蹴り上げる動きをする。 さらに二階堂が「乾さんすごいバックスだったみたいで」と言うと、西条は「えええ」とあわあわするが、すぐにハッとしてボールを放る。真面目モードへの切り替え、そのしなやかな緩急も西条役のキャラの特徴だ。
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