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NHK『ばけばけ』53歳俳優の「朝ドラおもしろお父さん」再び。“リアル息子”との絡みも面白い

「しぃじぃみぃ」キャラの味わい

NHK『あんぱん』© NHK こうした声の魅力は『ばけばけ』を楽しむ大きな醍醐味になると思う。夜の恨み節あとの朝食場面では、司之介が松野家定番のしじみ汁を「しぃじぃみぃ」と発音する。 「しぃじぃみぃ」キャラの味わいとでもいったらいいのか。この発音を聞くと、もう世の中の「しじみ」はすべて「しぃじぃみぃ」と発音すべきではないかと思う。  トキはこの「しぃじぃみぃ」汁を飲んで、「あぁ」と感嘆する。いぶし銀の飲みっぷりを聞いた司之介は毎回、それは武家の娘としてあるまじきだと注意する。同場面では奥の部屋からわざわざどかどかやってきて指摘する。晩御飯場面でも司之介は、トキの「あぁ」を自分でも真似てみせて念入りに注意する。  司之介はうるさいお父さんなのだ。うるさいが、面白い。ほんと岡部たかしという俳優は、朝ドラで面白いお父さんをコミカルに演じるために生まれてきたんじゃないかとすら思ってしまう。

父子揃って嬉しい出演

NHK『あんぱん』© NHK『情熱大陸』(MBS、2024年4月28日放送)出演回で、密着するカメラ前の岡部がしきりに「おもろい」という言葉を口にしていた。  自分の演技にとって重要なことは「おもろい」こと。「おもろい」が常に念頭にあるから岡部の演技は面白いという一本筋。  また同番組出演では、息子である岡部ひろきとの関係性も面白かった。単に父子というより、俳優仲間同士の雰囲気。フランクな先輩後輩という感じで、演技に関する意見交換も肩肘張らず、フリースタイルトークを展開していた。 『虎に翼』新潟篇で徐に櫛を取りだして髪をなでつけてばかりいる判事役もよかった岡部ひろきだが、『ばけばけ』では教師役を演じている。  第1週第3回までの放送時点で岡部たかしとの直接的な共演場面はない。武士が時代遅れであることを学校で言われたトキに対して、司之介が「教師ごときがそげなことを」と激昂する間接的な場面がある。  本作撮影期間中の岡部たかしはきっと息子相手に「お前の役、生意気だぞ!」なんてフリートークを繰り広げているんじゃないかと想像する。父子揃って嬉しい出演だ。 <文/加賀谷健>
加賀谷健
コラムニスト/アジア映画配給・宣伝プロデューサー/クラシック音楽監修 俳優の演技を独自視点で分析する“イケメン・サーチャー”として「イケメン研究」をテーマにコラムを多数執筆。 CMや映画のクラシック音楽監修、 ドラマ脚本のプロットライター他、2025年からアジア映画配給と宣伝プロデュース。日本大学芸術学部映画学科監督コース卒業 X:@1895cu
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