そして居ても立っても居られなくなった寛治さんは、栗ごはんのレシピを調べながら試行錯誤を重ね自力で作ってくれたんだそう。

「
実は私の母親は4年前に亡くなっていて。なのでもう食べることはできない母の手料理をどうにか私に食べさせてあげたいと、きっと寛治は考えてくれたんですね。
慣れない台所で見よう見まねで一生懸命栗ごはんを作ってくれたみたいなんです」
佳純さんは寛治さんお手製の栗ごはんにとても感動し「お母さんのと同じぐらい美味しい!」と絶賛しながらいっぱい食べたのですが……。
「
実は私、母に栗ごはんを作ってもらった事が一度もないんですよ(笑)。うちの母は栗ごはんなんて買うものだという考えの人だったので」
きっと佳純さんが夢にうなされて意味不明なことを言ったか、寛治さんが何かを聞き違えてこのようなことになったのだろうと想像しました。
「ですが寛治の優しさがすごく嬉しかったので、とても本当のことを言う気になれなくなってしまって」
そして佳純さんは、嘘をつくのは申し訳ないと思いつつ、このまま“母はよく栗ごはんを作ってくれた”という設定のまま生活していくことに決めたんだそう。
「それ以来、寛治の栗ごはんを気に入った私は『寛治かあさんの栗ごはんが食べたいな』とおねだりするようになり、頻繁に作ってもらうようになったんですよ」
それがよほど嬉しかったのか、
それから寛治さんは料理にハマり、栗ごはん以外にも様々なメニューに挑戦し、佳純さんに振る舞ってくれるようになりました。