モネのストリップ劇場とは全然違うとはいえ、秋元も劇場育ち。秋葉原のAKB48劇場で鍛えられてきた。以前彼女にインタビューしたとき「“板”(舞台のこと)ってカッコいいなーって。憧れでした」と話してくれたことがある。
アイドル時代は、アイドルの舞台経験と演劇における舞台経験は比べられないと思っていたが、いざ本格的な舞台に立ったとき、観客の視線や照明の当たる位置など身体感覚で理解できるように経験を積んでいる点では共通するものがあると感じたというようなことも。今回のモネの本物感はまさにそれだと思う。

劇場に警察の手入れが…。「もしがく」第2話場面写真(C)フジテレビ
三谷幸喜作品では、大河ドラマ『鎌倉殿の13人』(23年)で眉が一本つながった巴御前を演じて話題だったが、三谷の舞台にも3本も出ている。
ナチスのゲッベルスが主人公の『国民の映画』(14年)、ミュージカル『日本の歴史』(18、21年)、三谷の劇団東京サンシャインボーイズの出世作の令和版、『マクベス』を演じる舞台裏を描いた『ショウ・マスト・ゴー・オン』(22年)とどれも傑作で、秋元はそれぞれまったく違うキャラを鮮やかに演じ分けていた。筆者が好きなのは『日本の歴史』のクールで知的な歴史の先生。
今回『もしがく』のモネは幼い息子・朝雄(佐藤大空)を育てているシンママ。ヤンキーぽさの再現度も鮮やか。楽屋の過ごし方もなんだか堂に入っていた。警官・大瀬六郎(戸塚純貴)はモネに夢中だが、勝手にストリップの仕事は子どものためにならないなどと言うのでうっとおしそう。モネはこの仕事に誇りを持っている。でも潔癖な巫女・江頭樹里(浜辺美波)は女性性を売り物にする女性を批判する。
大瀬六郎はシェイスクピアのオセロー、毛脛モネはデズデモーナのもじりで『オセロー』では仲睦まじい夫婦だが、ふたりの仲を羨む者に翻弄されて悲劇を迎える。大瀬とモネはどうなるだろう。警官の純愛にストリッパーがほだされて、でも世間がふたりの恋を許さない、なんてことになるのだろうか。ただ、モネは放送作家・蓬莱省吾(神木隆之介)に息子の作文を書いてもらったりもしていて、そっちとの線も考えられる。

「もしがく」第2話場面写真(C)フジテレビ
第2話のモネは、あまりの露出しすぎに警察の事情聴取を受けることになった。そのためその晩、WS劇場は営業停止に。
「寿司屋が生魚出して営業停止になるようなものじゃない」と劇場支配人・浅野(野添義弘)の妻フレ(長野里美)は公権力に不服そうだ。もしかしてこれは『マクベス』のマクベス夫人による「魚は食べたいが、足は濡らしたくないという猫のよう」というセリフに近づけているのかもしれない。
ちなみに久部の「明日また明日そしてまた明日……」は『マクベス』のなかで有名なトゥモロースピーチと言われるセリフのど頭だ。