そのフレが後半、占いおばば(菊地凛子)と華麗にタップダンスを披露する。情緒不安定で、年齢的にはシニア層にカテゴライズされるけれど、実はかつて人気ダンサーだった。

おばば役はまさかの菊地凛子。「もしがく」第2話場面写真(C)フジテレビ
見事すぎるタップを見せた長野里美は、『もしがく』の時代(84年)、注目されはじめていた鴻上尚史率いる第三舞台の看板女優として活躍していた。久部(菅田将暉)が「新宿や渋谷に大勢観客が詰めかけているんです」というなかに第三舞台も入っているだろう。
長野も小劇場ブームのなかでアイドル的人気を博した。実力派でもあり、ロンドン留学したりシェイクスピア劇にも数々出たりしている。そして大河ドラマ『真田丸』(16年)で大泉洋演じる真田信幸の病弱な妻を演じて、かわいげとユーモアのある芝居の巧さに注目が集まり、ある種セカンドブレイクした。
浅野役の野添義弘も80年代、三宅裕司率いる人気劇団スーパー・エキセントリック・シアターで俳優兼アクションの振り付けも行って活躍していた。
多分、三谷幸喜は舞台で力をつけてきた俳優たちをこのドラマのために必要としているのだと思う。劇場スタッフ伴(野間口徹)の指示出しの手短な口調もリアリティがある。
ストリップ劇場でシェイクスピア!わくわくする展開に
風営法で崖っぷちのWS劇場を救うため、シェイクスピアの『夏の夜の夢』を上演すべく立ち上がる。演劇の才能がまったく未知数な寄せ集めの人たちを、板の上で経験を積み上げてきた俳優たちが演じる。「オラ、わくわくすっぞ」(byドラゴンボール孫悟空)という感じ。

「もしがく」第2話場面写真(C)フジテレビ
冒頭の、ネットを意識したであろう箇所にまんまと食いついてレビューしてしまった第2話。次回はどんな餌が撒かれるだろうか。
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『もしがく』ドラマレビュー
<文/木俣冬>
木俣冬
フリーライター。ドラマ、映画、演劇などエンタメ作品に関するルポルタージュ、インタビュー、レビューなどを執筆。ノベライズも手がける。『ネットと朝ドラ』『
みんなの朝ドラ』など著書多数、蜷川幸雄『身体的物語論』の企画構成など。Twitter:
@kamitonami