相続トラブルはなぜ起きる?兄弟姉妹で揉めないための生前準備のポイント
相続争いというと、お金持ちで資産もたくさん所有しているような家族間で起こりがちというイメージがあるのではないでしょうか。しかし、「相続財産の多少にかかわらず家族間の争いは起こる可能性がある」と、相続実務士の曽根恵子さんは話します。
今回は、『【図解】相続&贈与のすべてわかる本 令和8年度改正対応版』など、相続関係の本を多数監修している曽根さんに、どのようなときにトラブルが起こりやすいのか、そしてトラブルが起こらないようにするにはどうすればいいのかを聞きました。
まず、データを見てましょう。「司法統計年表」(令和6年)によると、家庭裁判所に持ち込まれた相続トラブルの案件のうち、遺産総額5000万円以下のケースが約8割、そのうち1000万円以下のケースが35.6%もあります。相続トラブルは富裕層だけに起こるのではなく、相続財産が少なくてもトラブルが起こることがわかるでしょう。
また、「相続トラブルの大半は兄弟姉妹間で起きている」と、曽根さんはいいます。これにはいろいろな原因が考えられます。
現在は平等相続となり兄弟姉妹は相続の権利が等分となっています。相続財産に土地などの不動産が含まれていると、平等に分けるのが難しくなるため、揉める原因になりがちです。
「家族間のトラブルは、対立してしまうと感情的になりやすい」(曽根さん)といいます。そのため、いったんこじれると収拾がつかなくなります。子どもの頃とは違い、それぞれの背景も変わり、意思疎通もうまくいかなかったりします。
「うちは仲がいいから大丈夫」と安心することはできないのが相続トラブルなのです。
相続トラブルを避けるためには、生前の準備が大切です。なにより重要なのが遺言書を残すことですが、そのためにも、相続人が複数いる場合は「生前の話し合いがなにより大事」と、曽根さんは指摘します。
話し合いの前提として準備しておくべきポイントがあります。まず、相続人の人数を正確に把握しておくことです。
兄弟姉妹だけなら簡単に把握できますが、被相続人(死後、財産を残す人)になる人に離婚歴、再婚歴がある場合は、先妻の子どもがいるか、後妻の子どもがいるかなど確認が必要です。たとえ音信不通で没交渉になっていても、実子であれば相続人です。ちなみに、元の配偶者は相続人ではありません。
ほかに子どもがいるかどうかは、被相続人になる人に直接聞けばわかるでしょうが、念のため戸籍謄本を取得して確認しておくといいでしょう。
なお、兄弟姉妹が亡くなっている場合は、その子どもが相続人になります。
次に、どれくらいの財産があるのかを確認し、その内容を目録にまとめます。「相続財産には負債も含まれるので、忘れないようにしましょう」(曽根さん)。
財産が把握できれば、相続税が発生するかどうかがわかります。相続税には基礎控除があり、「3000万円+600万円×法定相続人の数」の額までは非課税となります。たとえば、相続人が配偶者と子ども3人の場合は、相続財産が「3000万円+600万円×4=5400万円」までであれば相続税がかかりません。
相続財産が基礎控除額を上回った場合は、相続税の課税対象となります。法定相続分を相続したとして、おおよその相続税額を算出します。
こうした準備をしたうえで、被相続人になる人も交えて、相続人同士でどのように財産を分割するかを話し合いましょう。このとき、「相続人に不公平感がないようにすることが重要」と、曽根さんはアドバイスしてくれました。
最後に、話し合いの結果をもとに、本人の意思も確認しつつ、遺言書を作成することも忘れないようにしましょう。
こうしてステップを踏んで準備をすることで、いざ相続が発生したときにトラブルを未然に防ぐことができます。おひとりさまであれば自分で用意できますが、法定相続人が兄弟姉妹の場合などは争いにならない配慮もしておくことをおすすめします。
【曽根恵子】
そねけいこ/株式会社夢相続代表取締役。相続実務士®。公認不動産コンサルティングマスター相続対策専門士。出版社勤務後の1987年に、不動産コンサルティング会社を設立し、相続コーディネート業務を開始。相続実務士の創始者として、1万5000件以上の相続相談に対処。夢相続を運営し、感情面、経済面に配慮した“オーダーメード相続”を提案している。TV・ラジオ出演300回以上、新聞・雑誌取材協力1000回以上、セミナー講師実績670回以上と幅広く活躍。著書・監修書90冊、累計86万部発行。監修書に『子のいない人の終活準備』、『一番かんたん エンディングノート』『【図解】家じまい・墓じまい・相続 実家問題がすべて解決する本』などがある
<構成/女子SPA!編集部>
仲のいい兄弟姉妹間でも相続トラブルは起こる

画像はイメージです(以下同)
相続トラブルを防ぐためには生前の準備が重要
話し合いの前提として準備しておくべきポイントがあります。まず、相続人の人数を正確に把握しておくことです。
兄弟姉妹だけなら簡単に把握できますが、被相続人(死後、財産を残す人)になる人に離婚歴、再婚歴がある場合は、先妻の子どもがいるか、後妻の子どもがいるかなど確認が必要です。たとえ音信不通で没交渉になっていても、実子であれば相続人です。ちなみに、元の配偶者は相続人ではありません。
ほかに子どもがいるかどうかは、被相続人になる人に直接聞けばわかるでしょうが、念のため戸籍謄本を取得して確認しておくといいでしょう。
なお、兄弟姉妹が亡くなっている場合は、その子どもが相続人になります。
次に、どれくらいの財産があるのかを確認し、その内容を目録にまとめます。「相続財産には負債も含まれるので、忘れないようにしましょう」(曽根さん)。
財産が把握できれば、相続税が発生するかどうかがわかります。相続税には基礎控除があり、「3000万円+600万円×法定相続人の数」の額までは非課税となります。たとえば、相続人が配偶者と子ども3人の場合は、相続財産が「3000万円+600万円×4=5400万円」までであれば相続税がかかりません。
相続財産が基礎控除額を上回った場合は、相続税の課税対象となります。法定相続分を相続したとして、おおよその相続税額を算出します。
こうした準備をしたうえで、被相続人になる人も交えて、相続人同士でどのように財産を分割するかを話し合いましょう。このとき、「相続人に不公平感がないようにすることが重要」と、曽根さんはアドバイスしてくれました。
最後に、話し合いの結果をもとに、本人の意思も確認しつつ、遺言書を作成することも忘れないようにしましょう。
こうしてステップを踏んで準備をすることで、いざ相続が発生したときにトラブルを未然に防ぐことができます。おひとりさまであれば自分で用意できますが、法定相続人が兄弟姉妹の場合などは争いにならない配慮もしておくことをおすすめします。
【曽根恵子】
そねけいこ/株式会社夢相続代表取締役。相続実務士®。公認不動産コンサルティングマスター相続対策専門士。出版社勤務後の1987年に、不動産コンサルティング会社を設立し、相続コーディネート業務を開始。相続実務士の創始者として、1万5000件以上の相続相談に対処。夢相続を運営し、感情面、経済面に配慮した“オーダーメード相続”を提案している。TV・ラジオ出演300回以上、新聞・雑誌取材協力1000回以上、セミナー講師実績670回以上と幅広く活躍。著書・監修書90冊、累計86万部発行。監修書に『子のいない人の終活準備』、『一番かんたん エンディングノート』『【図解】家じまい・墓じまい・相続 実家問題がすべて解決する本』などがある
<構成/女子SPA!編集部> 


