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「演じられる年齢になるまで待って」大ヒット作監督に直談判していた45歳俳優。最新ドラマにみるベテランの成熟した余裕とは

特大おにぎりと3秒ルール

 捜査会議室の準備をする場面で、碇が玉虫と対面する。フランクで打ち解けた会話。玉虫は碇に「熱心なのはいいことだけどさ」と言う。碇が熱心な刑事であること。上司からの客観的評価がでた。  でもまだ碇というキャラの全貌がよくつかめない。そういえば、初登場場面の彼はどうだったか。海を眺めながら彼はおにぎりを食べていた。銀紙に包んだ随分と特大サイズのおにぎりである。  何口か食べたおにぎりがころり。それを拾ってフッと強く息をかけてまた食べ始める。小さいことはあまり気にしない。3秒ルールの大雑把キャラということか。でもこういう特大おにぎりこそ、熱血キャラにふさわしいパワーみなぎる食べ物ではないだろうか?

事務所独立後初の連ドラ主演で醸す「成熟」

 ここでやっと『ROOKIES』の話題を。佐藤演じる新米教師・川藤幸一は、絵に描いたような熱血キャラだった。問題ばかりの高校で他の教師たちは波風を立てないことがモットー。そんな中、川藤だけは新任者として熱血と情熱で乗り込む。  第1話中盤、教え子から投げ込まれた豪速球の野球ボールを拾い上げる。「WELCAME」と歓待の言葉が書いてあるボールのスペルミスをさわやかに指摘。鷲掴むボールがちょうどおにぎりサイズ(?)に見えるのは気のせいか。同作は佐藤にとって特に思い入れの作品である。  原作者・森田まさのりが『ナカイの窓』(日本テレビ系、2016年放送)に出演したときには、佐藤からの「もっと自分が役者として成熟してからやりたい。だからドラマの話がきても、自分がやれる年齢になるまで待ってもらえませんか」と綴られた手紙を紹介していた。  おにぎりサイズ感の野球ボールに込めた熱血キャラが特大おにぎりを手にした熱心キャラへとゆるやかに変化する。2024年に事務所を独立後初の連ドラ主演である本作『新東京水上警察』の佐藤隆太は、「成熟」したベテラン俳優の余裕を醸して演じている。 <文/加賀谷健>
加賀谷健
コラムニスト/アジア映画配給・宣伝プロデューサー/クラシック音楽監修 俳優の演技を独自視点で分析する“イケメン・サーチャー”として「イケメン研究」をテーマにコラムを多数執筆。 CMや映画のクラシック音楽監修、 ドラマ脚本のプロットライター他、2025年からアジア映画配給と宣伝プロデュース。日本大学芸術学部映画学科監督コース卒業 X:@1895cu
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