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東京の季節感=消費社会が作り上げた幻影? 札幌在住・元TBSアナが「帰ってきてよかった」と思う瞬間とは

 2010年にTBSに入社し、『朝ズバッ!』『報道特集』などを担当したのち、2016年に退社したアンヌ遙香さん(40歳・以前は小林悠として活動)。
アンヌ遙香さん

アンヌ遙香さん

 TBS退社から8年経った今年、紆余曲折を経て20年生活した東京を後にして活動拠点を故郷北海道に戻したアンヌさん。アラフォーにして再スタートを切った「出戻り先」でのシングルライフの様子や心境をつづる連載です。 【過去記事】⇒連載「アンヌ遙香の北海道シングルライフ」を読む  第59回となる今回は、アンヌさんが北海道に拠点を戻してよかったと感じていることを綴ります(以下、アンヌさんの寄稿です)。

出戻りから2年、実感する「地方の共通言語」の存在

 故郷北海道に拠点を戻し2年目。  帰ってきてよかったと感じるのはどんな点ですか、とよく質問されます。出身地へのUターンを考えている方、もしくは初めての土地に移住をし新たな生活を営み始めようと考えている方、ちらほらいらっしゃるようでして、私はいろいろと個人的に感じている事をフィードバックさせていただいています。  最近実感するのは、「地方の共通言語」の存在がとてもプレシャスであるということ。  先日東京のラジオを「ラジコプレミアム」で聴取していたところマライアキャリーの名曲「All I want for Christmas is you」が不意に流れてきて「ああハロウィンも終わって次はクリスマスなのね」なんてなんとなく感じていましたが、私の中でより「クリスマスの気配、および一年の移り変わりのとんでもない早さ」を感じさせたのが、セイコーマートのCM。 「あなーたをおもうたーびにー」という音楽がテレビから流れたとき、マライアキャリー以上の「冬が来てしまう! クリスマスが来てしまう!」という衝撃が私の中に走りました。この文字面を観てどういうことか理解できる貴方は、完璧な道民といえます。

道民にしか通じない“文化的共通言語”とは

北海道 さて、セイコーマートといえば北海道の地域密着型コンビニです。今話題のTBSドラマ『ザ・ロイヤルファミリー』でもセイコーマートの看板が映るシーンがあり、いわば北海道の象徴。道民としてはなくてはならない心の拠り所であり、道外にも熱狂的な「セコマ」ファンが多いのは有名です。  そのセコマのクリスマスケーキCMソングが、北海道が誇るロックバンドGLAY(函館出身)による「永遠を名乗る一秒」というバラードなのです。  私は昨年の冬からこのCMを聴き続け、もはやそらで歌えるほど。なんと、この名曲は5年連続でセイコーマートのCMソングに起用されているとのこと!  多くの道民のなかで「冬が来たと感じる曲」として定着しつつあるようでして、私個人の周囲でも「あなーたをおもうたーびにーがついに流れてきたよ!? 一年たつの早くない!?」という会話がかわされていました。  よく考えればこの曲のみならず、道民にしか通じない文化的共通言語というものは多くあります。 「の、ぼ、り、べ、つ、といえば?」とか、「僕サッカーで優勝したよ! が最近バスケットで優勝したよ! に変わったようである」とか、「オータム今年何回いった?」とか、これらはすべて道民にしか通じない独特の会話(気になる方はお知り合いの道民にお問い合わせください)。  一種の「ローカル感」なのかもしれませんが、その地域ならではの季節感や文化の共有は地元民にすればなんてことない日常のやり取りかもしれませんが、全国的に見ればかなり特異なもの。  20年東京で生活し、さまざまな人生経験を積んだ上で故郷北海道に舞い戻ってきた私からすれば、こういった共通言語、共通認識が存在することそのものが独特の生活の香りを感じさせ、それがまたたまらないのです。
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リアルな肌感覚での季節感
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