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『べらぼう』に芸人ばかり出るワケ。話題作りだけじゃない、ドラマ業界の“キャスティング戦略”事情

一瞬のために大物は起用しにくい&芸人の華やかな存在感

次に、『べらぼう』の世界の登場人物の多さがあげられます。主人公である蔦重こと蔦屋重三郎は、今でいうメディアプロデューサー的な人物であったため、後世にその名を残すたくさんの著名人に囲まれた人生でした。
画像:大河ドラマ『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』オリジナル・サウンドトラック Vol.2(日本コロムビア)

画像:大河ドラマ『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』オリジナル・サウンドトラック Vol.2(日本コロムビア)

しかし、そのほとんどがビジネスパートナー的なかかわりであり、歴史的に重要な割には登場が少ない人物ばかり。一瞬のために有名な俳優をキャスティングするには勿体なく、逆に無名俳優だと注目が集まりづらいところがあります。 そこを解消するのが役者としては未知数ながらも知名度高く華のある芸人さんです。出番は短いながらも名の知れた有名人だけあって、モデル人物へのリスペクトの姿勢も感じますし、芸人さん側も「またとない機会」だと、喜んで出てくれるということもあるでしょう。 そして、画面に出てくるだけで目を引くので、出演するワンシーンに注目も行きやすい。思い返せば表坊主役として出演していたナダルさん(コロコロチキチキペッパーズ)、出演は一瞬でしたが、のちに田沼意知を暗殺する佐野政言を一橋治済に存在を紹介する重要なシーンの役柄でした。 ナダルさんが演じたことで、後から効く意味深なその場面の印象が焼き付いた視聴者も多いはずです。

「とっつきにくいドラマ」というイメージを一新できる

そして、一番大きいと思われる理由が、『べらぼう』の空気感を軽く、おもしろおかしいものに見せるためではないでしょうか。一般的に大河は、「歴史の重厚感を感じさせる、若者にはとっつきにくいお堅いドラマ」という印象があります。 しかし、『べらぼう』は政治パートはあるものの、ほとんどが主人公・蔦重をはじめとする江戸時代の市井の人々の奮闘を描いたもの。また、蔦重が目指すのは、田沼時代のような華やかで享楽的な世界です。
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派手なシーンがないドラマを盛り上げる芸人たち
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