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受刑者からも「買いたい」と手紙が。伝説の雑誌が廃刊から半年で“奇跡の復活”を遂げたワケ

幅広い読者層、刑務所内の受刑者から購読を希望する手紙も

――『東京グラフィティ』の読者層として多いのはどんな人でしょうか? 仲野:ファンの方と会ったことはあまりないのですが、おそらく30~40代の方が“グラフィティど世代”だと思います。うちの雑誌が月刊だった頃に高校生活を送っていた世代は、グラフィティを結構知ってくれているイメージです。  編集部としては、『東京グラフィティ』1冊を1つのテレビ局みたいな感覚でつくっていました。「ニュースもバラエティもスポーツもやる」という意識だったので、特定の層にフォーカスして売るという方針はなかったです。  あと、ちょっとおもしろい話なんですけど、たまに刑務所からグラフィティ宛に手紙が届くことがあるんです。その手紙には、「グラフィティを読んで『いろんな人がいるんだ』とすごい感銘を受けた」と書いてありました。その方は、どうやら刑務所内でグラフィティを読んだらしいです。  また、その手紙には「グラフィティをもっと読みたいから、買わせてくれないか」とも書いてあったので1冊送付すると、次は同じ刑務所の違う受刑者から「友だちからグラフィティをお勧めされて読んだらすごく良かった。僕も買わせてほしい」という手紙が届きました。熊本にある刑務所からの手紙でしたが、その刑務所のなかでグラフィティのブームが起こっていたかもしれないですね(笑)。いろんな人の価値観に触れることができる雑誌なので、受刑者の方の罪への向き合い方や社会復帰の手助けになるような気がしたんです。 ――刑務所にいる人はおそらく、「そこまで読むの!?」というところまでグラフィティを熟読していたと思います。 仲野:その手紙を見たとき、僕は「『東京グラフィティ』の読者層ってすごく幅広いな」と思ったんです。そして、「そこまで楽しんでもらえるものを自分はつくっていたのか」と認識しました。それまでは「自分が好きでつくっている」という意識が大きかったのですが、刑務所の方が予想外に読んでくださっていたのがめっちゃうれしくて。  何度も言いますが、田村さんだって普通のおじさんです(笑)。いろんな人がグラフィティを読んでくれていた。彼が「『東京グラフィティ』が本当に好き」と言ってくれて、今こういう形で一緒にやれているのはすごくありがたいです。

おじさんとラブドール女性の恋愛の特集号に感銘を受けた

東京グラフィティ

おじさんとラブドールの女性・沙織の恋模様をまるまる特集した号

――新体制で編集長になった仲野さんですが、これまでの『東京グラフィティ』で特に好きだった企画はなんですか? 仲野:自分は7年前に編集部に入ったのですが、その直前に発売された2019年4月号ですね。もう、僕は完全にこれです。
東京グラフィティ

「もう、僕はこの号なんです」(仲野さん)

「沙織との日々」という企画でまるまる一冊つくった特殊な号です。等身大ドール……いわゆるラブドールの恋人と一緒に過ごすおじさんの特集でつくったんですけど。 ――あ、この女性はラブドールですか! 仲野:半年ぐらいかけて季節ごとに取材しているのですが、とにかく写真が素敵で素晴らしいですよね。夏は海で撮って、冬はスキー場で滑っている姿を撮ったり。写真だけ見ると、マジで恋人とずっと一緒にいるように見えます。これ、すごくないですか?
東京

ホースの水をおじさんにかける沙織

――沙織がホースを向けて、おじさんに水をかけてますね(笑)。 仲野:まるで、命を吹き込んだかのように撮っていて素晴らしい。たぶん、沙織はこういうことをする子なんでしょうね(笑)。  あと、ページに載っている文章はこのおじさんが考えている頭のなかを取材してそのまままとめたものです。たとえば、2人の出会いはおじさんが55歳の頃だそう。「写真にハマって沙織ちゃんに撮影のモデルになってもらったんだ。まさか、恋人になるとは思わなかった」「でも私、いいモデルだったでしょ」と、会話がずーっと続いていきます。  沙織はめっちゃしゃべる子で、2人は将来についても語り合っていますね。「あと何回デートできるかな」「もっともっと先のこと考えたほうがいい」「形ある沙織ちゃんがいつか溶かされちまうときが嫌だ」「私も嫌だけど、そういうときは必ず来るのも知ってる。でも、今は考えたくない」「もし骨になるなら一緒に骨になりたいんだけど」「でも、それは叶わないんだよ」「残念だ」って。
東京

いい写真がたくさんある伝説の号

――読みながら、ちょっと泣きそうになってきましたよ……。
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20年後にスナップを再撮影する際にかかる多大な手間
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