続けて、錦織のモデルとなった西田千太郎について触れる。
「西田さんが実際に残した日記を見ると、その日の体重やその日にあった出来事などが淡々と書かれているだけで、特に心情などは記されていません。でもその行間からは、誰からも好意的な目線を向けられることへの葛藤などが汲み取れ、『きっとこういう苦しみを持っていたのだろうな』と感じました。そういった部分を拾って、ドラマとして描いています」

錦織の底知れなさはモデルの影響が多くあったようだ。とはいえ、むしろ視聴者から愛されるキャラクターとして成立させられている要因には、吉沢の表現力の高さを挙げる。
「ヘブンの本に書かれている『中学校では、同僚の錦織友一が万事よくやってくれる。文学的にも気が合う、唯一の親友である』という文言を何度も読み返してニヤニヤしたりなど、可愛らしいシーンは多いです。ただ、チャーミングな部分がありながらも錦織らしさを崩さないで演じられているのはさすがです。吉沢さんは、ただただカッコいい役をやらせるのはもったいない役者さんです」
映画史に残る大ヒットを記録した『国宝』(2025年)で主演を飾り、吉沢は今まで以上に注目を集めたが、橋爪氏は「『国宝』とはまた違った人間臭さを『ばけばけ』でも表現してくれています」とその巧みさを絶賛する。
さらには、錦織の英語を話すシーンについても、「錦織はしっかりと英語が話せる人の話し方をしていて、吉沢さんの努力のたまものだなと。ただ発音よく話しているわけではなく、英語の意味を理解しているような喋り方をしているので本当にすごいです」と強調した。
第23週では錦織が激痩せした姿を見せ、多くの視聴者を驚かせたが、その撮影の裏側を口にする。
「第23週の撮影をするにあたり、吉沢さんから『1か月、撮影の間隔を空けてほしい』と言われたんです。つまりは『1か月で体重を劇的に落とす』ということなんですが、実際に13kgほど体重を落としてきて本当に驚きました。本作にかける思いが伝わってきました」
ハードな“肉体改造”に取り組んだため、クランクアップ時には終わりを惜しむ役者が多い中、吉沢は「やっとご飯が食べられる」と、どこかほっとした表情を見せていたようだ。
誰もが順風満帆な人生を歩めるわけではない。だからこそ、サワや錦織のような人物の生き様が、物語に深みを与えているのだろう。
<取材・文/望月悠木>
望月悠木
フリーライター。社会問題やエンタメ、グルメなど幅広い記事の執筆を手がける。今、知るべき情報を多くの人に届けるため、日々活動を続けている。X(旧Twitter):
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