「あれ?」と思った瞬間、真っ黒な人影のようなものが、部屋にぬっと入ってきたのです。
顔はよく見えません。のっぺらぼうのように平坦で、ただ黒い輪郭だけがある感じ。 細目の体のバランスに比べて顔の方が気持ち大きめでしょうか。ウーパールーパーが人間になったらこんな感じかなという印象。
その影はゆっくり歩いて私と犬が眠るベッドの横まで来て、そして枕元にたち、私の顔を上からジーッと覗き込むのです。
距離にして、30センチくらい。普段自分が生活している空間に現れた真っ黒い存在に驚きながらもまったく動けません。声も出ません。そしてその影は、おもむろに私の腕や肩をぺたぺた触り始めたのです。
やめろやめろ! 冷たいわけでもないし、温かいわけでもない。ただ「触られている」という感覚だけが妙にリアル。
怖いというより、訳がわからない存在に触られている不快感が先立ち、なんとか声を出そうとするもののまったく口が開かない。そのまま苦しみながら意識がなくなり、朝をむかえました。

汗がひいたあとのような体感があり、おそらく昨夜は高熱でうなされ、その影響で金縛りの症状がでたのかな、と判断しました。
よく話には聞いていましたが、脳が半分おきている状態で、体だけが眠っている。そういうときに幻覚を見る人も多いそうで、医学的にはわりと説明がつく現象。
とうとう私も初めて体験したのか! ……と、頭ではわかっています。わかっているんですが。実際に体験すると、あまりの鮮明さに「超常現象」じゃなかろうね、という気もおきてくるのです。
犬が私を起こしてきたのもなんだかおかしい。もしかしたら「異形のもの」がやってくることを教えてくれようとしていたのか……?! なんてね。心霊関係の本の読み過ぎですかね。