
調理自体は淡々と進み、さすが少数精鋭。無駄な動きが一つもありません。新人かつ、この数時間しかいない私が気をつけたのは、なにより“動線を邪魔しないこと”。それがこの現場での最優先事項でした。現場は「シン……」と静まり返り、ひたすら野菜を切る音が響き渡ります。すると、相変わらず眼光鋭い梅子から包丁を渡され、
「さあ、あなたの腕前を見せてちょうだい」と一言。
やはり梅子は、ゲームや映画のような口調で語りかけてきます。私はできる限り素早く、そして細くキャベツを刻みました。
「ふうん……まあ、合格。合格よ」
腕を組みながら去っていくその後ろ姿は、なぜかちょっとカッコいい。なんだかクセになってきました。
その後は怒涛の勢いで調理し、洗い物を担当し、風神雷神にくらいつこうと必死で作業をしていました。そして30分の昼休憩。二畳ほどの狭いスペースに密集し、3人で昼食を取ることに。梅子が静かに口を開きます。
「
……あなた、不器用だけど“当たり”だわ」
知らないうちに行動をチェックされ、評価されていたとは。正直、怖い。しかしそのあと、梅子は言葉を続けます。
「この施設ね、何十人ってスキマバイトさんを雇ってきたの。みんな長くても5時間くらいで、3時間程度の短い人もいてね。その新人さんたちを私たちみたいな高齢のおばちゃんが、いちから教えるのは本当に大変でさ。
一生懸命教えても、数時間後には大半がもう会わない人になっちゃうから……。なんていうか、んだなあ」
そして節子も続きます。
「施設の上の人に『長期で働いてくれる人を見つけてください』ってお願いしても、『そんなコストはかけられない。本当に人が足りないときに、不定期でその場しのぎの人を探す方がコスパがいいんだ』って。その負担が最近大きくなってきて、こんなふうに愚痴ってしまってごめんね」
スキマバイトさんへの指導料として、現場の人たちが少しでも報酬を上乗せしてもらえないのかと尋ねましたが、それは今はまだ現実的な話ではないようです。