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大分・高校剣道部の熱中症死から17年。倒れた17歳に「演技」と平手打ちした顧問の暴走を、なぜ周囲は止められなかったのか

誰が子どもを守れるのか。「暴走を止める仕組み」が必要

2017年7月1日に日本体育大学で講演をする工藤家族

2017年7月1日に日本体育大学で講演をする工藤家族

 では、親も、子ども自身も声を上げられないのだとしたら、いったい誰が子どもを守れるのか。  取材のなかで、英士さんは、暴走する指導を止めるための仕組みが、海外の一部にはあると教えてくれた。監督やコーチよりも強い権限を持つ人が、「これは危ない」と判断すれば、その場でプレーを止めさせる。その人が止めれば、監督もコーチも従うしかないという仕組みだ。  実際、アメリカの学校の部活動には、アスレティックトレーナーと呼ばれる専門職が置かれているところもあるという。選手のケガや熱中症などを判断し、危険と見れば選手をプレーから外す。しかもその判断は、監督やコーチの意向とは独立していて、覆せないものとされている。指導者とは別に、こうして「止める権限」を持つ大人が現場にいる意味は、大きいと感じる。  近年は、指導者による暴力やハラスメントから子どもを守る「セーフガーディング」という考え方も、国際的なスポーツ界で広がっている。国際オリンピック委員会も、アスリートを守るための指針を定めている。勝利や指導方針よりも子どもの安全を優先する権限を、指導者の「外側」に置くのが、世界の流れになりつつある。  日本にも、こうした専門職や相談の仕組みがまったくないわけではない。だが、数えきれないほどある学校の部活動の一つひとつにまで、指導者から独立して「止められる」存在が行き渡っているとは、まだ言いがたい。しかも部活動だけでなく、民間のスポーツクラブまで含めれば、目の届かない現場は無数にある。  だからこそ、もっとも根本的で、もっとも難しいのは、指導者自身の意識を変えることだと英士さんは言う。 「よっぽど危機管理がないと、学校もそんなことはさせきらんわな。顧問の先生に任せてあるから。今の指導者を変えるのは、なかなか難しいんよ。昔の考えとか、受けてきた教育があるからな」  だからこそ、両親がいま力を入れているのが、これから指導者になる若い世代や、教員を目指す大学生への講演だ。危険性を知る大人を、現場に一人でも増やしていく。これから現場に立つ人たちにこそ、剣太さんのことを知っておいてほしいという願いからだ。 <取材・文/菅原春二>
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