ママはみんな初心者、自分を責めたら絶対にダメ【シングルマザー、家を買う/21章・後編】

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「検診ではまだ引っかかっていないんですけど……」。そう言うと、おばあちゃん先生は「病院にちゃんと行って相談した方がいいわよ」とアドバイスをくれた。

 その言葉に引っかかった私は、保育園の帰りにかかりつけの小児科に相談しに行った。すると、1歳の息子は平均体重よりも小さく、ミルクの飲みも少ないので、これから毎週、病院に様子を見せに通うことになったのだ。

 その瞬間、この1年間、私は息子の何を見ていたのだろうとすごく後悔した。離婚のゴタゴタで息子と向き合っていなかったのではないか、ちゃんと私が息子に集中していたら、こんなことにはならなかったのではないか。

 そんな風に思いつめているのが分かったのか、小児科の看護婦さんは、私の頭に手を置いて、優しく語りかけてくれた。

「お母さん、成長は本当に個人差があるの。これに気づく方が難しいわ。だって、息子君自体は健康で、毎日笑ってくれるんだもん。異常はないんだもん」

 たしかに、毎日笑顔で、ニコニコしている息子は、それだけで温かい心にしてくれた。でも――。

 表情が硬いままの私に、さらに看護婦さんは、こうも続けてくれた。

「ママはみんなが初心者なの。だから、自分を責めたら絶対にダメだよ」

【シングルマザー、家を買う/21・後編】 そう話しかけられた途端、私は今まで気丈にしていた心の蛇口がひねられたようで、ぶわっと抱えていた感情を看護婦さんに打ち明けてしまった。

 離婚したこと。本当は不安なこと。息子がちゃんと成長していないことに責任を感じていること。でも、それを表にだせないこと。

 それを横に座ってじっと聞いてくれた看護婦さんは、ぎゅっと私を抱きしめてくれた。

「大丈夫、大丈夫」

 そして、ひとしきり泣いた私の肩を強く掴んで、「さぁ、これからだね」とニコッと笑ってくれたのだ。

 そうだ、これからだ。

 私と、娘と、息子は、これからなのだ。過去にとらわれていても、何も進まない。いま、不安の種が見つかったのなら、それを解消するために、これから前を向いて歩くしかないのだ。

「これから、立派な男に成長するために頑張らなくちゃね」

 そう息子を抱っこして話しかけると、息子はニカーと笑ってくれた。そうだ、これから、これから!

<TEXT/吉田可奈 ILLUSTRATION/ワタナベチヒロ>

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【吉田可奈 プロフィール】
80年生まれ。CDショップのバイヤーを経て、音楽ライターを目指し出版社に入社。その後独立しフリーライターへ。現在は西野カナなどのオフィシャルライターを務め、音楽雑誌やファッション雑誌、育児雑誌や健康雑誌などの執筆を手がける。23歳で結婚し娘と息子を授かるも、29歳で離婚。座右の銘はネットで見かけた名言“死ぬこと以外、かすり傷”。Twitter(@singlemother_ky

※このエッセイは毎週水曜日に配信予定です。

吉田可奈
80年生まれ。CDショップのバイヤーを経て、音楽ライターを目指し出版社に入社。その後独立しフリーライターへ。現在は西野カナなどのオフィシャルライターを務め、音楽雑誌やファッション雑誌、育児雑誌や健康雑誌などの執筆を手がける。23歳で結婚し娘と息子を授かるも、29歳で離婚。座右の銘はネットで見かけた名言“死ぬこと以外、かすり傷”。Twitter(@singlemother_ky
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