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「サンタさんへ♪」女子は7歳にしてキャバ嬢の心になれる【シングルマザー、家を買う/40章】

<シングルマザー、家を買う/40章>  バツイチ、2人の子持ち、仕事はフリーランス……。そんな崖っぷちのシングルマザーが、すべてのシングルマザー&予備軍の役に立つ話や、役に立たない話を綴ります。

タダでもらえるものでも妥協はするな!

 サンタは我が家にもやってくる。  どの子供にもそうであるように、クリスマスは娘にとっても一大事で、毎年プレゼントを無条件でもらえるこの日を待ち望んで1年を過ごしていると言っても過言ではない。1年を通して、おもちゃ屋さんに行けば「これは今年のサンタさんに頼もう」というのが口癖で、何でもかんでもサンタに頼めばもらえると思い込んでいる。  しかし、娘の誕生日は11月。その時点でママやじいじ、ばあばからプレゼントをもらっている娘は、その1カ月後に訪れるクリスマスまでに、欲しいものがすべて手に入ってしまうのだ。人間そんなに欲しいものがたくさんあるわけではない。そうなると、娘にとってサンタに頼むプレゼントは、もはや惰性になる。ふらりとおもちゃ屋さんに入って、「ん~、これかな~」くらいの願いでサンタにもらおうとするのだ。  これはいかん、こんな中途半端な気持ちでプレゼントをもらおうなんて絶対にあかん!  タダでもらえるなら、もっと心から欲しいと思ったものをもらうべきだ! そんな持論がある私は、娘の態度が許せないでいた。そこで娘が「あれもいいけど~これでもいいな~」と悩む後ろ姿に向けて、少し話をしなくてはならないと思ったのだ。  私:ねぇ。本当はどのプレゼントが欲しいの?  娘:う~ん。どれもいいけど、なんか欲しいんだよね~  私:そんな態度で決めたプレゼント、あんた一生大事にすることできるの?  重い。小学低学年にこれは重い。でも、あげた直後から部屋の片隅に転がっているぬいぐるみやおもちゃをこれまで見てきた私は、物を大事にしてほしいという想いから、心を鬼にして言ってやった。  私:ねぇ、本気で欲しいと願うものしか、サンタはくれないんだよ。しかも、その本気は態度で示さないとちゃんと伝わらないから!  娘:

サンタに本気を伝える方法

 娘はこの時、衝撃を受けたようだ。本気度が足りない。それが伝わらないと、プレゼントはもらえない。でも、誕生日以外でもらえる大き目のプレゼント。これは絶対に欲しい。  そんな考えが脳裏に浮かんだのだろう。娘はすがるように私に問いかけてきた。 サンタ 娘:ねぇ、その本気はどうやったらサンタさんに伝わるの!?  私:え?  それはちょっと私にも分からない。だいたい、人の本気なんかいくつになってもわからない。  私:そ、そんなん自分で考えないと意味ないよ!  もはや逃げである。上手くごまかせたのかどうなのかわからないが、娘には響いたようだ。そして本気をどうやって表現するのか思いついたのか、家に帰ると部屋にこもり、何か作業を始めている。

「これが私の本気だから!」

 ごそごそと作業をしているのを横目に夕飯を作っていると、ドアがガラッと開き、そこからいそいそと出てくる娘……。その手にはセロテープと白い紙が……。  娘:ねぇ! ママ! サンタさんはどこなら見える!?  おお、突拍子もない質問がきたな。ここにいるサンタからは娘のことが見えているけど、娘が想像するのは白いヒゲの太ったおじいちゃんである。  私:そうだなぁ。ベランダからはみえるんじゃない?  そう答えると、娘はベランダのガラスに白い紙をペタペタと貼り始めたのだ。そして、娘は大きな声ではっきりとこう言ったのだ。  娘:これが私の本気だから!  カッコいい、カッコいいよ、娘。きっとその白い紙には欲しいプレゼントが書いてあるんだろうと思い、それをアマゾンで注文しようと決意してちらりと覗くと、とても力強い文字でこう書いてあったのだ。 「サンタさん、だいすき☆」と。  媚びてる……媚びてるよ、7歳にして媚びてるよ……!  その下には、かわいい女の子が描かれており、胸元には娘の名前が書かれている。トナカイとサンタらしき似顔絵もちらばせてあり、とても賑やかな営業メールのよう……。そうだ、これは完全にキャバクラの営業メールだ……。 サンタにお願い これが天然の魔性ってことね……。あまりの媚びっぷりに驚いた後、結局欲しいプレゼントが何なのかわからないので、直接聞いてみることにした。するとまた首をかしげてこう言ったのだ。  娘:う~ん、かんがえちゅう~  わー。もう本気、全然ないじゃん……。  そして毎年、サンタからのプレゼントは適当な本になり、娘はそれなりに喜んで終わるのである。そして今年も例外なく、娘には本が与えられる予定だ。 <TEXT/吉田可奈 ILLUSTRATION/ワタナベチヒロ> ⇒この著者は他にこのような記事を書いています【過去記事の一覧】 ====【お知らせ】==== 吉田可奈さんが、港区立男女平等参画センターの講座に講師として招かれました! テーマは「会社や組織に属さずフリーで働くこと」。吉田さんに直接いろいろな質問ができるチャンスですので、ご興味のある方はぜひ、以下のサイトよりお申込みください。 ↓↓1月15日(金)まで予約受付中です↓↓ http://www.minatolibra.jp/service/event/events/2015121700317/ 『シングルマザー、家を買う』著者が語る~会社や組織に属さずフリーで働くということ~ 2016年1月26日(火)18時40分~20時30分(18時20分開場) 会場:港区立男女平等参画センター リーブラ 2階 学習室C ======== 【書籍『シングルマザー、家を買う』、好評発売中!】 ご好評いただいている本連載「シングルマザー、家を買う」が書籍化しました! タイトルは同じく、『シングルマザー、家を買う』(扶桑社)。シングルマザー生活や家を建てるのに役立つ、書籍オリジナルのコラムも満載です。 『シングルマザー、家を買う』【吉田可奈 プロフィール】 80年生まれ、フリーライター。西野カナなどのオフィシャルライターを務める他、さまざまな雑誌で執筆。23歳で結婚し娘と息子を授かるも、29歳で離婚。座右の銘は“死ぬこと以外、かすり傷”。Twitter(@singlemother_ky※このエッセイは隔週水曜日に配信予定です。
吉田可奈
80年生まれ。CDショップのバイヤーを経て、出版社に入社、その後独立しフリーライターに。音楽雑誌やファッション雑誌などなどで執筆を手がける。23歳で結婚し娘と息子を授かるも、29歳で離婚。長男に発達障害、そして知的障害があることがわかる。著書『シングルマザー、家を買う』『うちの子、へん? 発達障害・知的障害の子と生きる』Twitter(@knysd1980
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シングルマザー、家を買う

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