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「何歳までに結婚、とか決める人生は“死に待ち”だ」ジェーン・スーさんに聞く

 いま注目を集めている本がある。『私たちがプロポーズされないのには、101の理由があってだな』(ポプラ社)。

 タイトルは未婚女性に向けた自己啓発本のようだが、その内容は独身男性のみならず、大きな意味でのコミュニケーション全体にかかわる示唆に富んでいる。この本がどのようにできあがったのか、著者であるジェーン・スーさん(1973年、東京生まれ東京育ちの日本人。作詞家、ラジオパーソナリティー、コラムニスト)にインタビューした。

⇒【前編】「私たちがプロポーズされない理由」、謎のアラフォー著者に聞く
http://joshi-spa.jp/47502


”未婚のプロ”の代弁者にはなる気はなくてだな……



――いままでラジオやコラムで言っていたことを、今後テレビメディアが独身女性たちの代弁者やある種の権威として、祭り上げる可能性もありますよね。

ジェーン・スー

ジェーン・スーさん。『わたプロ』は既に4刷だが、「誤解しないでいただきたいのは、本には私ができたことを書いているのではなくて『できてないこと』を書いてるってことです」

ジェーン・スー(以下、スー):コメンテーター的なお仕事の依頼はいただきますけど、基本的にはあまり出ないようにしています。

 見ている人の思考が止まるから嫌なんです。コメンテーターって10秒とか20秒とかの限られた尺のなかでスパンと発言して、よりインパクトのある言葉を発した人のほうが見ている人の印象に残るじゃないですか。私にはそれはムリなんです。

 きちんと30分くらいかけて議論するとかだったら全然いいと思うんです。でもニュースやワイドショーのコメンテーターだと、ポンと言ったその発言を見ている人は基本的には「なるほどね」「またこんなことを言っているわ」となって、自分で考えることを止めると思うんですね。思考を止める作業には加担したくないんですよ。

 いままでは基本的に来た仕事を何も考えずに受けてきたんですけど、そろそろ考えたいなというものが出てきた。もちろん出版前に来ていても断っていたと思うんです。自分が楽しく生きることが最優先なので、それの弊害になることはしないです(笑) 

――スーさんが30歳くらいのとき、10年後の自分について結婚という部分ではいろいろ想像していたと思うのですが、仕事に関してはどうですか?

スー:絶対働いているとは思っていました。好きなことをやっているだろうなとは思っていたんですけど、まさかそれが本を出すとかそういうことではないと。そこは想像していなかったですね。

 仕事は何でもいいわけではないんですけどある程度何でもよくて……「何でもいい」と言うとすごく語弊があるんですけど「これじゃなきゃダメ」というわけではないんです。

 メガネ屋さんで働いていたときも本当に楽しくて、いまでも戻りたくなるくらい楽しかったので業種がどうのということではないんですよね。若干制約のあるところで面白いものを出すとか、冷蔵庫の中にあるもので料理するみたいなそういうことをやっていることが楽しい。ゼロから何かを作るみたいな芸術家肌では全くないので。

40超えたら大体のことはどうでもよくなった



――ここまでお話を伺ってきてご自身が変わっていないということはすごくわかったのですが、これから変わっていきたいとしたら、それはどんなところを変えていきたいですか?

スー:変わっていきたいところ……(長い沈黙)……何かあるかな?

――単純に現状維持だけ考えているわけではないと思うんです。環境をガラッと変えるとか違うジャンルでやってみるとか、そういう思いはありますか?

スー:それはないですね。話が来たらそのとき考えるというスタンスで、作詞のときもそうだったので。紙資料を渡されて「時系列を書いて」と言われて手伝い始めた進行管理の仕事のなかで「歌詞を書いて」と言われて、「ちょっと違うだろそれ!」という話をしたんですけど、うち(音楽制作プロダクションのagehasprings)の社長の玉井健二に「まあまあ大丈夫だよ、書けるから」と言われて、横で見ながら「あ、こんな感じ、こんな感じ」と言われながら書いたのがアイドルグループのTomato n’ Pine(トマトゥンパイン)の一曲目の『Life is Beautiful』なので。

 予定もあまり立てたくないんですよ。来週の予定が入っていることもちょっとストレスというくらい予定を立てたくないので、そのときにやりたいことをやりたいですね。

――来週の予定を立てたくないというのはちょっと新鮮ですね(笑)

スー:来月の予定とか本当キツいですね。デイリーベースの仕事は大丈夫なんですけど、友達と遊びに行くのに来月とかの日にちを押さえなきゃいけないのが本当にキツくて。でも全体的に予定はあまり決めたくないですね。「来年の目標!」みたいなのを毎年立てては3月くらいには忘れちゃうということを繰り返してきたので。

 でもざっくりと2013年は書く仕事をして本が出せたらいいなとは思っていたので、それは叶ってよかったなと思います。

「やりたくないことまでやってこそ仕事だよ」みたいなことももちろんわかるし、でもそれは20代30代とやってきたので。

 超大金持ちになりたいというわけでもないので、40代以降は食べるのに困らないくらいの稼ぎがあればいいかなと思っています。

――スーさんの女友達ってどんな方たちなんですか?

スー:大変な人たちですよ。ちょっとした産廃ですよね。増田さん会ったよね?

ポプラ社・増田:「本、書かないんですか?」って思わず言っちゃうくらい皆さん面白いです。

スー:しかも大人になってからではなく子供の頃からの友達なので、まあよくこんな感じに育ったなと思います。15歳とか遅くても18歳ぐらいからの友達ですから。あ、でも30歳過ぎてから友達になった子もいますね。

――僕の回りのアラフォーの女性の方は図らずも『わたプロ』に出てくるとおりの方々で。「あれ、結婚してないんですか?」と聞かれて「人生楽しすぎて気がついたら40歳過ぎてたのよ~」と言っていて、「あ!わたプロに書いてあったことだ!」と思いました。

スー:人生を楽しんでいる方ですね。でも、本当にそうなんですよ。ちょいちょい気になっているのは、ツイッターで検索すると「私はこうじゃない」「私は彼氏がいないことがずっと悩みだった」とか、「この人たちは稼ぎがいいっぽいけど、私はそうじゃない」みたいなことで気が滅入っているツイートを見つけるのですが、これはバカな私たちのことを書いただけなので、これと自分を比較して憤慨したり傷ついたりするのは本当に時間がもったいないのでやめてください、という思いはすごくあります。

 その人たちにはその人たちの人生があるので、これが全てでは全然ない。ただ「こういうバカが増えてきていますよ」っていうことなんです。

――あくまでこれはスーさんのひとつのかたちであって、その人に必ずしもピッタリくるものではないということですよね。

スー:ピッタリこなかったら「この人とは違う人間なんだ」と思ってくれればいいんです。そのことについてストレスを感じるのは本当にもったいない。その人の人生と私の人生が違うことをお互いに尊重し合いたいので。

――TBSラジオに出始めた頃は、アラサーの女性に向けて「中年こじれ島に来るな!」というスタンスで話していましたよね。「いまの現状は楽しいけどこっちには来るな」というのはいまも同じですか?

スー:そうですね。『わたプロ』にも「そんなことをやっていたらダメだぞ」と書いているので。

――逆に既婚のプロというかうまいこと結婚生活を続けている人たちもいて、いろんなプロの人たちをお互いに尊重し合っているという感じなのでしょうか?

スー:もちろんそうです。どっちがいいという話は冗談半分ではしますけど、基本的にその人の人生はその人にしかわからないところもあると思うので、尊重し合っています。

――バツイチの人も読者対象だと思うのですが、離婚に対するマイナスイメージは世の中的にも薄れてきつつありますが、男のバツイチも同じような状況にあると思いますか?

スー:そう思いますよ。でも、男の人の婚姻歴について私が言うのは不遜じゃないですか。自分がバツもマルもついてないのに「男はバツイチの方が一回結婚しているから安心ね」とか言うのは、どのツラ下げて……ってことになるので。

 もちろん棚上げでそういうことを言う人もいますけど、私はどちらでもと思っています。

――既婚男性から派生しての愛人と不倫についても聞きたいのですが、両者は違うと思いますか?

スー:違うと思いますね。いまは便利な言葉ができたなと思うんですけど、不倫は婚外恋愛って(笑)。愛人は完全に契約のもとなので、役割がはっきりしているというところで全然違うと思います。

――スーさんのまわりでも30代のときに不倫をしていた人はいたんですか?

スー:いましたね。不倫してる子たちはみんな相手の男の非現実的な煙幕みたいなものにやられてるなーっていう感じはありました。

――若い女の子の方がオッサンにコロッと転がされるものなのでしょうか?

スー:いや、年齢はあまり関係ないんじゃないですかね。わかりやすく大事にしてくれる人が好きな女の人は多いんですよ。わかりづらく大事にするのは伝わらなくて、自分を求めてくれたりとか、すごく即物的に大事にしてくれる人が好きなんです。

――友人のアラフォーの女性に「これからジェーン・スーさんの取材なんですけどなんか注意すべきことはありますか?」と聞いたら、「歯の浮くような変な褒め方をするよりは普通に敬意を持って接したほうがいいんじゃないか、と言われて、「あぁそうだよな」と思って来たんです。

スー:ありがとうございます。わざわざそんなところまで気を遣っていただいて(笑)

――男性が年上の女性に「お綺麗ですね」「若く見えますね」と言っている場面を何度か目にしたことがあるのですが、女性の方はわりと死んだ目で「ふーん」っていう顔をしていて。

スー:それは言われた方が普通にニコッとして「ありがとうございます」と言えばいいだけの話だと思いますよ。「どうせそんなの」みたいなことを言う人がいますけど、そこまで人の言葉に期待するなよ、もとを取ろうとするなよって思います。

――「もとを取る」ってすごくいい表現ですね(笑)。大人の余裕という感じがします。

スー:40を越えた途端に大体のことはどうでもよくなってきましたね。

――40歳になったとき、心境的な変化はありましたか?

スー:もっとあるかと思っていたらなかったんですよ。20代から30代は「さすがにもう大人だ」とか「あぁ、20代じゃなくなっちゃった」みたいなのがあったんですけど、「わーもう40だ!」となると思ったら本当になんにもなくて。まわりは半々くらいで「気がついたら40になっちゃった」という人と「わぁ、もう40!」という人に分かれています。

人生の計画を立てるのは「死に待ち」だ



――次に本を出すとしたら、狙っているテーマとかありますか?

スー:ないですね。思ったことを書いてそれがたまったらという感じですかね。本当にね、人生なんて絶対計画しないほうが楽しいですよ。「死に待ちだよ、そんなの」って先日AM(アム)というサイトでやっている人生相談でも言ったんですけど、計画すればするほどどんどん先まで決めたくなって、自分で宿題を決めてそれをやるだけの人生になると、最終的に死ぬのを待っているだけになってしまうと思うんです。

 そうすると結婚できないんですけど、まぁ別にいいかみたいな(笑)。

「いくつまでに結婚しないと、いくつまでに子供を産まないと、いくつまでにいくつまでに……そのためにはこれをしないと……」って言っているのは死に待ちですよ。

 この間友だちが、「60歳で仕事を辞めて80歳で死ぬとして、年金がいまよりちょっと減ると想定すると、医療費とかも含めて月に20万必要だとしたら4800万いる」っていきなりLINEで送ってきたんですけど。

(一同爆笑)

スー:二人で「ヤバイ、それヤバイ!大至急集まろう」「いま40だから60までの20年間に4800万貯めないとヤバイ!」と言って、「これは節約だわ」ってセブンイレブンでおでんを買って2階のイートインで食べて。結果「もういいや」となって、翌日には二人で別のところにご飯食べに行ったんです。

 その子はちゃんと銀行まで行って個人年金の表とかももらってきて、それを広げておでんを食べながら「あぁこれか」「でもこれしか貯まんないんでしょ。無理――!」って。最終的に「死ぬべ」「死ねばいいんじゃないの?」「まあでも最終的には道の上でも住めるし」みたいな話になって、「じゃーねー!」って言って自転車で帰って終わりっていう。

(一同爆笑)

――ではこの先はとにかく決めないことを大事にしていきたいと。

スー:そうですね。いまのままということではなくて、決めないということです。やりたくないことはやらないけど、信頼できる人が何か新しいことを提案してくれたらそれは真摯に考える。

――「それぞれの生き方を尊重して、そこに敬意を払って尊敬できる人の話はちゃんと聞いて」というのは本来あるべき姿ですが、何回りもしないとわからない人も多いし事例をいっぱい集めたらわかる人もいる。わかる人たちが読んでいるから好評価を受けているのだと思います。

スー:あと誤解しないでいただきたいのは、『わたプロ』は、私ができることを書いているのではなくて「私ができてないこと」を書いているんです。改めて読み直してみたら半分くらいはできていなかったというのが多々あったので、「私がスゴイ!」というのではないんです。

 これが全部できていて、まるで説法のように「これはよくないんだじょ!」と言っているのではなくて、「私はまだできていませんのでみんなで手を取り合ってがんばりましょう」ということなんです。

 できないことを101個書いたら本が出たって、本当世間は優しいと思います。いい話だなって。

――できるできないというよりは、スーさんが語るということがいいんだと思います。人間は誰しも完璧ではないですから。101個まとめてぶつけられることでようやく気づける人たちもいると思うので、スーさんがまとめたことはものすごく意味があると思います。

スー:ありがとうございます。自覚していることが大事だと思います。「自覚・自認が大事で自責はやめろ」というのが私のポイントです。自分を責めるのはもったいないですから。

<TEXT/丸山ゴンザレス>




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