試しに80年代の映画やドラマ、雑誌を見てみるとおわかりいただけると思いますが、その当時はとにかく大きいことはいいことだったのです。
風を切るための大きな肩幅、いちいちまくらないことには物が取れない長い袖、脚の太さを忘れさせてくれる長いスカート、タックをたくさんとることでウエストが太ってもわからなくさせる太いパンツ、あらゆるものが入りそうな大きなパッチポケット、いざというときに何者かからの防御に使えそうなほど大きな襟など、ありとあらゆる部位が大きく、またそのスタイリングも、大きいものの上にさらに大きいものを重ねることで成り立っていたのでした。
その同じスタイルを同じビッグ・シルエットが流行っている現在に持ってきたとしても、素敵には見えません。それは80年代のあのときしかおしゃれで素敵には見えないスタイリングなのです。
では、今のビッグ・シルエットはどんなふうに着こなしたらよいでしょうか。
大きい、けれども柔らかく。同じトレンチコートを選ぶにしても、
なで肩で、ゆったりと、風に揺れるような素材で、闘争的な雰囲気を消して、戦うことなど忘れたかのように。

http://wear.jp/peli4649/4871355/
画像:
WEARより
また、80年代のように、どこもかしこも大きくして女性的なシルエットをすべて隠してしまうというのではなく、
ウエストや胸郭、もしくは首から鎖骨にかけての女性らしいデコルテが感じられるように。とにかく、大きくはあるけれども、行きつくところは女性であるような、そんな着こなしが今のビッグ・シルエットの気分です。

※画像:WEARより http://wear.jp/dholic/8305557/
おしゃれに見えるシルエットとスタイリングは、その時代によって変化します。残念ながら、「大き目のトップスにはタイトなボトム」というような方程式は成立しません。それはそのときだけのもの。大き目のトップスにタイトなボトムがかっこいいときもあれば、大き目のトップスに大き目のボトムスがかっこいいときもあります。
なぜこのようなことが起こるのでしょうか。なぜならファッションとは変化だからです。変化しないものはファッションではありません。変化しない自分の軸と、変化するファッション、この2つのバランスをうまくとりましょう。なぜなら、おしゃれとは、そのバランスの絶妙な塩梅だからです。
<TEXT/小林直子>
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【小林直子】
ファッション・ブロガー。津田塾大学学芸学部国際関係学科卒、文化服装学院卒。東京コレクション参加ブランドのパターンナー、大手アパレル会社の企画室を経て独立。現在、湘南エリアを中心に独自に開発したメソッドによるファッション・レッスン、各種ワークショップを開催するなど活動中。ブログ『
誰も教えてくれなかったおしゃれのルール』