成宮寛貴の件は“ゲイ暴露”とは言えない――LGBT当事者からの意外な声
週刊誌フライデーによって報じられた成宮寛貴さんのコカイン吸引疑惑。直後引退を表明した成宮さんのメッセージには「この仕事をする上で人には絶対知られたくないセクシャリティな部分もクローズアップされてしまい」とありました。
一部では「報道がアウティング(※)を行った」との見方もありますが、今回の件をLGBT当事者はどのように見ているのでしょうか。
今回、企業向けLGBT研修や、LGBTに関する情報を発信するウェブメディア「Letibee LIFE」、LGBT関連のマーケティング・リサーチサービスをする企業Letibeeの代表で、自身も性的マイノリティであるという榎本悠里香さんにお話を聞きました。
(※アウティング:本人の了解を得ずに、公にしていない性的指向や性自認等の秘密を第三者に暴露する行動)
――今回の成宮さんの件が、アウティングだという意見がありますが。
榎本「当事者の一人としては、今回の成宮さんの件はアウティングと言うことには抵抗があります。」
――それはまた、どうしてですか?
榎本「今年問題になった、一橋大学ロースクールでの転落事件(※)はアウティングだと思います。
本人が友人に対してカミングアウトを行い、その後友人が第三者に話してしまったという流れなので。
しかし成宮さんの件は、当人が『ゲイだ』と言っているわけじゃないのに、メディアが“成宮ゲイ引退”といった形で取り上げていますよね。ただの噂でしかないのに『これはアウティングだ』としてしまうことで、逆に成宮さんのセクシャリティを勝手に断定してしてしまっている状態じゃないかと、最初に思ったんですね。」
(※編集部注:一橋大学法科大学院3年に在籍していたA君(当時25歳)は、同級生の男子学生B君に恋愛感情を抱き、2015年4月に告白。B君は「恋愛感情に応じることはできないが、これからも友達でいよう」と答えました。
その後、B君は同級生10名でつくるLINEグループで、「おれもうおまえがゲイであることを隠しておくのムリだ。ごめん」と発言して、A君がゲイであることを暴露。
2015年8月24日、Aくんは登校しましたが、校舎6階のベランダに手をかけてぶら下がっているところを発見され、その後転落し死亡。)
――確かに、本人のコメントは「セクシャリティな部分をクローズアップされてしまい」であり、「ゲイだ」とは言ってないですね。
榎本「本人は公言していませんし、カミングアウトをしたとは言えない。今回の件は、事態は大きくなったものの根本はゴシップであり、アウティングと言うのはすこし乱暴かなと思っています。」
――でも本人のコメントや、グレート・サスケ氏が成宮さんからサスケ氏の息子への「いわゆるセクハラ」があったという告白など、いってみれば、状況証拠が積み重ねられている状態ですよね。それでも、本人が公表するまでは、事実とはいわないと見なすのが正しいのでしょうか。
榎本「彼が公言していないのに、ゲイだと公言しているかのように扱うことは、事実と異なりますよね。誰も彼のセクシャリティについて、正しい情報を知らない状態なのです。状況証拠だけで成宮さんがゲイだと決めることも、『アウティングだ』と言うこと自体も乱暴だなと思いました。
当事者の一人としては、アウティングと言うことには抵抗があります。
