もしカミングアウトされたら…「無理にクールに振る舞うことはないです」
――会社員生活をしていると、本人の興味に関係なく噂に接してしまうことがありますよね。そういった時はどう対応したらいいのでしょうか。
榎本「その噂が広める価値があるのかを考えてみてほしいですよね。自分がその情報に触れたとき、嫌悪感を抱くのか、ゴシップと感じるのか。なぜそう思うのかを、一度立ち止まって考えてみてほしいです。

榎本悠里香さん
嫌悪感を抱く理由としては、LGBTについて知識がないこともあります。知識がつけば、噂のネタにするものじゃないと気付くのではないでしょうか。また誰かに言ったあと、当事者本人がどんな思いをする可能性があるかを考えてみてください。」
――では、何も言わないでおく、というのがいいのでしょうか。
榎本「噂を聞いたら『黙っておく』『触れずにいる』のではなく、言われてもし衝撃を受けたのなら、なぜそう感じたのか考えてみてほしいです。LGBTについて知らなかったら調べる、もし可能ならば本人に話をしてみるなどをして、自分と向き合う方向に動いてみたほうがいいと思います。」
――自分の価値観を考え直す機会なんですね。
榎本「人には誰しも“無意識の偏見”があります。自分では正しいと思っていても、そうじゃないものが世の中にはあります。そういった“無意識の偏見”を持っていないか、自分を振り返るいい機会なんです。」
――もし、知人にカミングアウトされたらどのように振る舞えばいいのでしょうか。
榎本「無理にクールに振る舞うことはないと思います。驚いてもいいですしね。ただ、LGBTについて知らなかったのなら知るいい機会と思ってほしいですね。それに素直に本人に聞いてみるのもいいと思いますし。知ろうとする姿勢が大事かと思います。
他の誰にも言っていない状態でカミングアウトされるということは、信頼されているということ。LGBTについてわからなかったとしても、一緒に考えようという立場をとることでスムーズにいくと思いますね。」
――愛知県のヤクルトのケースだと一緒に考えようとしなかったんですね、きっと。
榎本「セクシャリティ=性に関わることというイメージがあるので、職場の人と話しにくいというのはあるかもしれません。たしかに性の部分もありますが、人としてどう生きるかという話なんです。もっと職場でも話し合える環境になればいいですね。」
<TEXT/ミノシマタカコ>