S「ババァになったなー(笑)」
私「おまえもな」
挨拶代わりの悪口をさらっと受け流し、早い時間で誰もいないカウンターに座り、お祝いのシャンパンを注文しました。
さらに娘を見るなり……。
S「一重? ブスだなー(笑)」と一言。さすがにイラっとしたのでやんわりくぎを刺しました。
画像はイメージです
私「ちょっと。私はいいけど娘に言うのはやめてよ!」
S「いやぁだって本当のことじゃん(笑)」
2歳のいたいけな子供を指差して笑うのです。
付き合ってる当時はそんなに気にならなくなっていた彼の口の悪さが、今は妙に気に障り、何を期待してここに来てしまったんだろうと、さっきまでの自分を恨みました。その後も事あるごとに娘に「ブス」を連発。
滞在時間は30分くらいだったでしょうか。さすがに我慢も限界に達しました。
私「気分悪いから帰るわ!」
T「え? なんで? 怒ってるの? 冗談じゃん。本気にすんなよ(笑)」
冗談にもほどがあります。私は勢いよく3万円を叩き付けて帰ってきました。
娘が「ブス」の意味をまだ理解していなかったことが、せめてもの救いです。こんな奴を相手にしている時間ははっきりいって私にはありません。
親という生き物は自分は何を言われても構わないけど、冗談とはいえ子供への悪口は我慢できないものなのですね。今回は子作り相手候補以前の「人間性」の問題でしたが、きっと周りの人は何も変わってないのに、変わったのは母になった私の方かもしれません。
<TEXT/杉沢志乃>
【杉沢志乃(すぎさわしの)】
35歳。東京生まれ。ナンバーワンホステス時代に独学で行政書士試験に合格。25歳で小説『キャバクラ嬢行政書士の事件簿』(ゴマブックス)を出版し、翌年『キャバギョ!』でDVD化。以後シリーズ3まで出版。映像メーカー広報部を経て、現在は女性向け映像メーカー「
ラ・コビルナ」の代表取締役社長となる