♂&♀
Lifestyle

52歳独身、風俗依存症になったサラリーマンの孤独【あたしが出会った男たち】

借金して、精力剤まで飲みながら…

 仕方がないので、これが最後だと思い、中田さんのところに行った。最後だと思いながら、泣く泣く接した。  けれども、我慢できなくなった私は、とうとう本音を聞いてみようと思った。 「なぜ、こんなにしょっちゅう、あたしを呼ぶの? 確かに気に入ってくれているのは嬉しいけれど、理由がわからない」
悲しむ男

写真はイメージです

 中田さんは押し黙った。性欲には個人差もあるし、あたしがお小言を言う権利は皆目なく、大きなお世話だと言われてしまえばそれまでだ。中田さんは重い空気の中、顔をもたげ、口を開いた。 「あやのことが好きなのは本音。けれど、お金がないのも本当のところ。借金をして通っているのも事実、でも……」  そこまで言って、いったん口をつぐんだ。そして立ち上がり、鞄からなにかを取り出してきた。なんだろう? 「これ、見て」  白い袋の中からピンク色の錠剤を見せられた。怪しげな薬だということは、一目見てわかった。あたしは出された薬を手にとってしげしげと見た。 「それ、精力剤なんだ。中国から取り寄せていて、もう10年以上前から飲んでいるんだよ」 「なぜそこまで?」  中田さんは続けた。その顔には覇気はまるでなかった。死んでいる顔だと思った。 「40歳のときから仕事のストレスがひどくて、風俗遊びを覚えた。以来、風俗に通っている時だけはストレスを感じずに平静になれるんだ。だから、気に入った風俗嬢がいると何度も呼んじゃうんだよ」

52歳・実家暮らしで、素人女性との経験はない

 趣味もなく、52歳にもなって未だ独身。仕事は休まず行くが、いつまでたっても平社員。普通の女性と付き合ったことはなく、実家暮らしを続けている。  この男が唯一自分でいられる場所が風俗だったのだ。薬を使ってまで続けるさまは、まさに風俗依存症。あたしは言葉が見つからず天井を仰いだ。  風俗の世界でしか生きられない女がいる。  風俗の世界でしか相手をされない男がいる。  “性”という見えない欲望はときに愛おしく、ときに人生を狂わしてしまう。 <TEXT/藤村綾> 【藤村綾】 あやゆるタイプの風俗で働き、現在もデリヘル嬢として日々人間観察中。各媒体に記事を寄稿。『俺の旅』(ミリオン出版)に「ピンクの小部屋」連載、「ヌキなび東海」に連載中。趣味は読書・写真。愛知県在住。
1
2
Cxense Recommend widget
あなたにおすすめ