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女子大生が外銀マン合コンで、ひどい現実を思い知るまで【西麻布のリアル】

「絶対に持ち帰られない」つもりだったのに…

 残されたのは、私と成宮似の男だけ。男が口を開いた。 「もう0時前だけど、帰れる?」 「急いでタクシー乗れば、ぎりぎり終電に間に合うかもです」 「そっかあ」  帰ろうと立ち上がった私の前に、彼が立った。彼の身長は、私より20cm以上高い。 「絶対に送っていくから、いやタク代出すからこのあと付き合ってくれない?」  申し訳なさそうに手を合わせる背の高い男。その姿がなんだか大きな犬みたいに思えてきて、さっきまであった(絶対に帰ってやる)という気持ちが見事なまでに消えている。  最初から少しいいなと思っていた男性に誘われたことが私をチリチリと熱し、化粧室に駆け込んだ。もう一度、香水を纏わせ、一通り化粧を直した後、唇をピンクに塗る。 香水 西麻布の深夜1時は、真夜中ではない。クラブから出てきた陽気な男女、狩りに繰り出すサラリーマンたち、電話をしながらタクシーから降りたと思えばそそくさとビルに消える女の子。彼のあとを歩く私は軽やかだった。この街にいる誰よりも楽しんでる自信さえあった。

「2人きりになれる場所、いこっか」

 西麻布の交差点を越え、右に曲がる。大通り沿いと違い、道を入れば閑静だ。その一角にある白い壁のお店に彼は迷いなく入った。  ソファに座って嬉しそうに笑う彼。その笑顔を独り占めできたことだけでもここにきた意味があったと思ってしまう。 「どうしたの、距離遠くなってない?」 「いや、慣れてなくて、こういうの」 「こういうのって?」 「男の人と2人きりなこと、です」  頑張って彼の目を見ると、その目には驚きの色が浮かんでいた。 「俺、アイちゃんのことすごいタイプなんだよ。…なんだろう、俺、今日すごい酔ってる」  その日初めてのボディタッチは彼からで、私も抵抗なんてしなかった。というか、出来るはずなかった。むしろやっと彼が私に触れてくれたことが嬉しくて仕方ない。 「私も…私も酔ってます」  その言葉を合図に彼は手を挙げた。店員から受け取った伝票を確認し、カードを滑り込ませ、また店員へと渡す。  彼は私の耳に口を寄せる。アルコール混じりの吐息と声に身体が軽く震えた。 「どこ、いこっか」  軽やかに立ち上がる彼、ふらふらと立ち上がる自分。 「2人きりになれる場所、いこっか」  返事を待たずに彼は手を引き、タクシーに乗り込んだ。時刻は深夜3時前。タクシーは5分もせずに奥まった建物の前で止まった。”そういう場所”だとは到底思えない外観だったことは覚えてる。  部屋に入った後の記憶はとても曖昧だ。エレベーター内で唇を重ねられ、部屋の扉を開けたらさらに深く重ねられ、そのまま白いシーツの上に押し倒された。言葉なんてもう存在しない。彼の可愛らしかった笑顔に似合わない、荒々しい求められ方だった気もする。乱暴に脱がされた下着がベッドサイドに落ちる。
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「……やられた」。あっけない終わり
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