色んな意味で、終わりはあっけなかった。
目がさめると、乱れたシーツの上には私しかいなかった。すっかり正常な動きを取り戻した頭で、昨晩と今の状況を照らし合わせる。
「……やられた」

案の定、カバンから取り出したスマートフォンには<
ゴルフあるから先出るね! 昨日はありがとう!>の通知。
食われた。
私は昨日、周りであれほど聞いてた、港区で遊ぶ典型的なサラリーマンに食われたんだ。
自分だけは獲物になりたくないと思ってたのに、なってしまった。その事実がジワっと心に滲む。
何よりも、客観的に見ればただのヤリ目だった男にときめきと…少しの、ほんの少しの恋心を抱いた自分の幼稚さを憎んだ。えらそうに我が物顔で遊びながらも、お酒に飲まれて冷静な判断すらできないただのガキだと、嫌でも思い知らされる。それが悔しくて、悔しくてたまらなかった。
このメッセージに何を返そうがこの人との関係が発展することはないだろう。化粧が崩れ落ちた顔が鏡に映る。酷い顔だ。偽物のシンデレラの末路なんてこんなもの。お姫様なんてこの街に存在しない。
鏡からスマートフォンに視線を移し、文字をタップする。ミネラルウォーターを半分一気に飲み干した。お風呂場を覗くと広い浴槽がある。どうせなら時間いっぱいゆっくりしていこう。
「今日の夜は誰との合コンだったっけ」
クレンジングで丁寧に化粧を落とす。あの人や他の男たちは、私みたいな女の子を捕食したと思ってるだろうけど、それは全くの間違いだ。だって、
<昨日はありがとうございました♪>
<また今度飲み会しましょー! 可愛い子たち呼びます!>
<その代わり、かっこいい人お願いしますね(/ω\)>
私だって、あんたたちと同じ。狩る側なんだから。
【マドカ・ジャスミン】
あまたのメンズと飲み交わした経験から合コンコンサルタントに。ウェブメディア「
AM」「
MTRL」「
AFTR5」などでライターとしても活動中