またもうひとつ、日本の梅雨~夏に合うスタイルを提供してくれる分野もあります。湿度があるような国、もしくは酷暑の国で発達したスタイルです。例えばフランスの植民地だったベトナムや、イギリスの植民地だったインドやアフリカの衣服は西洋の影響を受けつつ、その地域の気候に合った形で発展、洗練されていますから、このように梅雨、そして暑い夏と続く日本には適しているものも多くあります。

麻のタンクトップ(AMERI、7,992円)画像:WEAR
植民地のスタイル、つまりコロニアルスタイルの代表的なものとしては、白や生なりの麻のスーツ、サファリジャケットやチノパンツがあります(サファリジャケットとチノパンツは軍服でもあります)。またインドの手織り生地であるカディというコットン素材でつくられたシャツやワンピースは汗も吸収し、着ていて涼しいです。シルク素材も汗は吸いますし、着ていて涼しく感じます。手洗いとアイロンがけを面倒と感じるかもしれませんが、梅雨の季節に向いている素材です。
でも、アウトドア、スポーツ、そしてコロニアルスタイルのいずれも、カジュアルなスタイルですので、一般的な企業への通勤着として適しているとは言いがたいです。ですからよほどカジュアルなスタイルが許されている職場以外、これらで通勤するのは難しいかもしれません。確かにコロニアルスタイルのなかには麻のスーツというオフィシャルな場に向いているスタイルもありますし、とても格好がいいです。しかし、今の日本で白い麻のスーツが似合う職場は少数でしょうし、実際に1日じゅう、麻のスーツで過ごすのは難しいだろうと思います。

Dafna レインブーツ 画像:WEAR
となると私たちにできる梅雨の通勤着のスタイルは、高機能素材を使ったインナーウエアを着る、雨の日はレインコートを着て、レインブーツを履くなどでしょう。と同時に、アパレルメーカーへ、高機能素材を使った通勤着が欲しいという要望を上げたり、リクエストしていく。そうすることによって、徐々に日本の梅雨に適した通勤着が増えていくことと思います。
<TEXT/小林直子>
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【小林直子】
ファッション・ブロガー。津田塾大学学芸学部国際関係学科卒、文化服装学院卒。東京コレクション参加ブランドのパターンナー、大手アパレル会社の企画室を経て独立。現在、湘南エリアを中心に独自に開発したメソッドによるファッション・レッスン、各種ワークショップを開催するなど活動中。新刊『
わたし史上最高のおしゃれになる!』発売中。ブログ『
誰も教えてくれなかったおしゃれのルール』