――ご自分をみゆきに投影した部分はありますか?
瀧内:デリヘル嬢の面接のシーンで、みゆきが「君にはデリヘル嬢はできない」と言われて「私はできます。これを(デリヘル)やらなきゃいけないんです」と脱ぐシーンがありますよね? あのシーンは、もう本当に……脱げなくて……。
――どうして脱げなかったんですか?
瀧内:心理的に脱げなかったですね……怖くて……。「あぁ、みゆきはこんな気持ちになるんだな」っていう瞬間でしたね。この作品には、自分の想像をはるかに超える難しいシーンがたくさんありました。

『彼女の人生は間違いじゃない』より
ありのままの自分と向き合う、それは怖いけれど楽になる
――廣木監督は命をかけてこの映画を作りたいと、この作品ではとりわけ厳しかったそうですね。瀧内さんは撮影中にどんどん痩せてしまったとか。
瀧内:監督はとにかく私の要らないところをそぎ落としてくれるような人。私が考えて演じると「はい、また誤魔化して笑ってるね」なんて核心をつくんです。「瀧内は素でもっている優しいところがあるのに、なんでそんなに怖い顔をするの?」「あなたはそのままでいいんだよ。ダメだったらダメでいいじゃん。そのために次があるんだから。自分が終わらせない限り、必ず次があるんだから」なんて言ってくれて、ホロッとくるんですよね。
監督と仕事をしているうちに素の自分が徐々に出てきて……。監督との仕事は、優しい気持ちになれる時間でした。同時に、自分自身と向き合うというのはとても怖い経験でもありました。

――表面的な自分がそぎ落とされて素の自分になったとき、ご自分の中でどんな変化が起こったんですか?
瀧内:すごく楽になりましたね。知らない人に会うときはいつも緊張していたのですが、それがなくなりました。“自分はこうだからしょうがないな”なんて開き直って(笑)。
でも、装おうとする自分がなくなった気がします。自分の素直な心を見せれば、相手も同じように心を開いてくれる。人と付き合いやすくなりました。撮影後に実家に帰った時、「27年間見たなかで一番いい顔をしてるね」と母に言われたのが嬉しかったです。