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恋愛は「バグ」。そんなに美しくて優しいものじゃない|燃え殻インタビュー

「本命のブス」と「二番手の美人」

――小説にはかおり以外にも六本木のクラブで働く美女・スーが登場しますが、cakesで連載している時は同時期に存在していなかったのに、本ではかおりと同時進行で会っている設定になっています。あんなに心酔している「ブスなかおり」がいる一方で、「美人なスー」とも会う。女性としては、少し引っかかります。 宮川:その点は、構成を変える段階ですごく話し合いました。ブスの彼女のことが好きと言っているのに、なんの言い訳もせずに美人な女のコと会っている。でも燃え殻さんと話した時に、男からしたらこの別フォルダ感の方がリアルだと。  スーもスーで好きな人がいて、ボクと同じように“自分には何もない”という自意識で互いに引き寄せられている。恋愛感情よりも欠落感でつながっている、という設定にしたんです。男性のリアリティを殺しちゃいけないなと思いまして(笑)。 燃え殻:男だったら心当たりがある人も多いんじゃないか、と思うんです。本命の彼女がいる一方で、そういう欠落感でつながる人がいたとしても、むしろある一定の距離以上に近づいていかないんですよ。だから、cakesの時にはあったスーとのセックスの描写はナシにしたんです。 宮川:物語としてのツジツマも大事ですが、男性のリアルな思考がむしろ面白いとも思いました。でも、すごく好きな人がいても、その人とだけつながって生きているわけじゃないのは、女性も男性も一緒ですよね。むしろ好きな人とだけつながれず、人生に様々な人間が出入りする方が、現実的で切ないと感じたんです。 燃え殻さん_4

男はずっと少年、は本当だった

――燃え殻さんの恋愛小説を女性の視点で編集した時、やはり男女の感覚の違いを感じましたか? 宮川:同じだなと感じる部分も多い一方で、よく男って大人になれないとか、ずっと少年とか言うじゃないですか。その実態を、今回でまざまざと知りました(笑)。糸井さんや大根さんをはじめ、これだけ多くの大人の男性たちが「俺もそうなんだよ!」っておっしゃったというのは、男性の時間感覚に刺さっている実感がありました。彼らの“連続性”みたいなものをこの小説を通して知りました。 燃え殻:それはあるかもしれないですね。糸井さんや二村(ヒトシ)さん、会田(誠)さん、堀江(貴文)さんとか、みんな大人然として振舞っているトップランナーで、二村さんに至っては女も知り尽くしているはずなのに、ものすごく少年っぽくいままでの恋愛話をしてくれたりして。魂がすごく男の子みたいで、あ、みんな同じじゃん! って思えた。 宮川:この小説にはある意味、男性のロマンチシズムがつまっているので、吉岡(里帆)さんの帯のコメントにある「男心がちょっとわかった」っていうのは、まったく私も同意見ですね(笑)。
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ガチな恋愛はマジでヤバい
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