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タイトミニスカートでギター……新しいSHISHAMOがオシャレ!

 突然ですが、オシャレなバンドと聞いて浮かべるのはどんな人達でしょう?  いかにもトレンドに敏感な出で立ちで、“ついさっき代官山で一式買いそろえてきました”みたいなのもいれば、夏でも頑なにニット帽をかぶっている古着マニアっぽいのもいる。  そういったバンドはインスタ映えするのでしょうし、アパレルメーカーなどともコラボしやすいのだろうと思うのですが、その一方で洋服ばかりが目立ってしまっていて、正直着せられている感が拭えません。

いつものジャージ姿から一転、タイトミニスカートに

 そんな現状に一石を投じたのが、女性3人組バンド・SHISHAMOの新曲「BYE BYE」のミュージックビデオでした。彼女たちは、この中でトレードマークだったTシャツやジャージ姿から一転、タイトやロングのスカートにジャケットのスタイルを披露しているのです。  このビジュアル面での変化が、きちんと演奏や楽曲にも反映されているのが素晴らしい。淡々と繰り返される松岡彩のベースラインにクールで荒々しいギターのカッティングが粘っこく絡む。ひとつひとつの手数が重たく強い吉川美冴貴のドラムスは、宮崎朝子のボーカルを煽り立てる迫力です。  これまでの仲良しグループの合奏からうって変わって、自立した個人がケンカをたしなんでいるといった具合の緊張感が漂っているのですね。要は、大人のサウンドになっているわけです。
 Bye Bye

「BYE BYE」MVより(2017年7月)

SHISHAMO 明日も

今まではジャージ系が多かった(「明日も」MVより。2017年2月)https://www.youtube.com/watch?v=zhCtzmDWsN0

 このまっとうな成長を象徴しているのが服装の変化であって、裏を返せば<おしゃれに属する諸動作、立居振舞や、会話は、つねにわれわれの服装の結果でしかない。>(『ダンディズム 栄光と悲惨』 著:生田耕作 中公文庫 p.118)と断じたジョージ・ブランメルの言う通りなのでしょう。

全身黒コーデ、アコギ1本で歌うテイラー・スウィフト

 というわけで、「BYE BYE」でのSHISHAMOから浮かんだのが、テイラー・スウィフトでした。こちらも順を追って音楽、服装、メイクアップがセットでシフトチェンジしてゆき、いまでは27歳の女性なりの歌をうたっています。 「You Belong With Me」、「We Are Never Ever Getting Back Together」あたりのハッチャけた陽気さから、「Shake It Off」ではシンプルの極みとユーモアが同居する成熟した佇まいへと変化していきました。  なかでも筆者が息を呑んだのが、全身黒のコーディネートに身を包みアコースティックギター1本で弾き語りをした「Blank Space」。自信に満ち溢れた言動と、まだまだ道半ばであるといった謙虚さが入り混じった表情に、無駄を排した服装が見事にマッチしていたからです。  でもこれを観て、“テイラーと同じタートルネックが欲しい!”と思う人はあまりいないでしょう。なぜなら、この装いはテイラー・スウィフトでしか成立しないものだからです。
テイラー・スウィフト

「Blank Space」MVより(2016年1月) https://www.youtube.com/watch?v=p1Zt47V3pPw

Shake It Off

テイラー・スウィフト「Shake It Off」MVより(2014年8月)https://www.youtube.com/watch?v=nfWlot6h_JM

 同様に、「BYE BYE」で宮崎朝子が着ている真っ赤なノースリーブやグレーのタイトスカート、黒のブーツなどは、その商品単体としては目を引かないかもしれません。  だとすれば、それはよく似合っていることの証であって、背伸びした感じも無理やり着せられている感じもしないのは、音楽そのものもシックになってきているからなのでしょう。 <TEXT/音楽批評・石黒隆之> ⇒この著者は他にこのような記事を書いています【過去記事の一覧】
石黒隆之
音楽批評の他、スポーツ、エンタメ、政治について執筆。『新潮』『ユリイカ』等に音楽評論を寄稿。『Number』等でスポーツ取材の経験もあり。いつかストリートピアノで「お富さん」(春日八郎)を弾きたい。Twitter: @TakayukiIshigu4
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